2014 Fiscal Year Research-status Report
緊急避難論の基礎的考察─大規模災害における犯罪行動への適切な対応を目指して─
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25780042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 聡太 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00547820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緊急避難 / 刑事法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度の調査をふまえて刑法37条に関する議論の現状に対する分析結果の公表作業を完結させるとともに(法学協会雑誌131巻6号1頁以下掲載),刑法37条の起草過程における議論及び起草当時のドイツ・イギリスにおける議論を主たる対象として,同条の沿革に関する調査・検討に本格的に取り組んだ。既に前年度において19世紀中後期のドイツ・イギリスにおける緊急避難論については一定の知見を得ていたが,刑法37条の起草に対する影響という観点からの更なる検討を行うための前提作業として,日本の起草当時の議論状況をより厳密かつ明確に把握する必要があるとの認識に至り,議会資料など直接の立法資料に現れた緊急避難論のほか,NDL近代デジタルライブラリーなども活用しながら,現行刑法の成立までに出版された教科書・解説書等のうち現時点でアクセスが可能なもの(千を超える)を網羅的に調査しなおす作業に取り組み,害の均衡の条文化に至る経緯,不処罰根拠に係る議論の変遷過程,「害悪の最小化」という考慮に結びつく見解の存在等を明らかにした。その具体的な成果は,法学協会雑誌131巻7号1頁以下及び同12号71頁以下において公表した。本年度の後半ではこれらの調査・検討をふまえ,19世紀中後期のヨーロッパにおける諸文献の中から刑法37条の起草との関係で特に重要と思われるテクストに焦点を当てこれらを精読しなおす作業を本格化させた。その結果得られた成果として特に重要と思われるのは,これらのテクストから,既存の法制度との関係において緊急避難の法理の「例外性」を意識しその射程を限定的に捉えようとする発想が看取される点である。こうした成果の詳細と,それが刑法37条の緊急避難論との関係で有する意義等については,英米独の現行法に関する調査もふまえたうえで,次年度において公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本刑法37条に関する現在の議論状況の把握と分析を完結させ,その成果を法学協会雑誌131巻6号1頁以下に公表したほか,刑法37条の起草過程における議論の詳細な調査及び検討の成果を法学協会雑誌131巻7号1頁以下,同131巻12号71頁以下に公表することができた。同条起草当時のドイツ及びイギリスにおける議論の検討結果についても次年度に公表の予定であり,英米独の現行法に関する調査も含めて本研究を完結させるための一定の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,刑法37条起草当時のドイツ及びイギリスにおける緊急避難論についての調査を完結させるとともに,英米独の現行法に関する調査・検討を継続し,本研究を完結させたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度請求額とあわせ,平成27年度の研究遂行に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)