2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 博康 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (90323625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 契約法 / 本質的債務論 / 整合性の原理 |
Research Abstract |
本年度は、整合性原理に関する自身の従来の研究を踏まえ、フランスにおける本質的債務論や整合性原理に関する近時の研究についての比較法的分析を実施する予定であったが、実際にもその方針に従って検討が進められた。 免責条項規制に関するフランスの破毀院の判例法理である本質的債務論に関しては、本質的債務の違反について免責する条項をコーズに対する侵害として書かれざるものと見なすとした1997年のクロノポスト判決の登場以降、様々な紆余曲折を経て、破毀院商事部2010年6月29日判決(フォルシア2判決)によって、本質的債務に対する違反があってもその債務の射程と矛盾するものでなければ責任制限条項は排除されないと判断されるに至っていた。以上のような本質的債務論との関係における判例によるコーズの概念の利用(およびそこでのコーズ概念の主観化・具体化)に関しては、実質的・現実的な対価性および契約上の均衡性の要請に基づくものとして特徴付けられ得るものの、そこからは、本質的債務論それ自体はそのような特徴付けに相応しない固有の理論構造を元来内包していたのではないかという問題意識がほとんど窺われない。それらの観点を踏まえ、本質的債務論と整合性の原理の理論的関係について、本質的債務論に関する判例の展開等を踏まえて検討した成果として、「フランスにおける本質的債務論の展開と整合性の原理」能見善久ほか編『野村豊弘先生古稀記念論文集・民法の未来』63-92頁(商事法務・2014年)を執筆した。 以上の検討は、契約法における整合性の原理に関する2種類の下位原理のうちの1つについて主題的に考察したものであるが、契約当事者の行動における一貫性の要請というもう一方の下位原理に関する考察を含め、引き続き検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、フランスにおける本質的債務論や整合性原理に関する検討を行う予定であったが、それらに関する検討はほぼ計画通りに実施され、最終的に論文の執筆・公表を完了するところまで到達しており、研究計画の進捗は概ね順調であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画に関しては、従来予定していた事項に加え、イタリアにおけるカウサ論をめぐる理論動向についても研究を実施することを検討している。本年度の研究を実施する中で、フランスにおける(とりわけ20世紀以降の)コーズ論が属している理論的文脈の特殊性が強く意識され、そのより精密な理論的位置付けを探るためには、それに対する派生的ないし対抗的な理論ヴァージョンとしてのイタリアにおけるカウサ論との位相差について考察するのが最も有効な分析方法の一つとなると考えたためである。この点については、次年度の作業の中で、早速検討を進めていくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1冊分の標準的な書籍購入額に満たない額が、未使用となった。 次年度の予算と合わせて、書籍購入分として使用することとする。
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