2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Principle of Coherence in Contract Law
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25780061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 博康 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90323625)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民法 / 契約法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、イタリア法におけるカウザ論に関する検討を中心に、イタリアの契約法における諸問題について検討を行った。イタリアでは、契約の効力要件としてカウザが要求されているものの、その意味内容については、様々な学説上の議論があり、またその点に関する判例の立場にも変遷が見られた。すなわち、学説および判例における抽象的カウザ論から具体的カウザ論への推移である。ここで注目されるのは、イタリアにおける具体的カウザ論は、(イタリア旧民法に関する解釈として支配的であった)かつての主観説への回帰ではなく、抽象的カウサ論をも含む「客観説」の内部での派生的な理論ヴァージョンとして学説上理解されている、という点である。ここでは、カウザの概念の主観化とは異なる「客観的カウザの具体化」の流れがあり、そのような意味におけるカウザの概念を中核として契約の内的な構造と整合性が支えられるということは、契約法における整合性原理の機能に関する一つの理論的可能性を示すものとして、極めて興味深いものである。 以上の点については、フランスにおいて2016年の契約法改正によってコーズの概念が廃棄されたことなどをも踏まえつつ、さらに研究を深めていく必要がある。その点を踏まえ、2017年度から科研費助成事業(基盤研究(C))「現代契約法における原因主義の後退およびそれに代替する諸制度に関する総合的研究」として、以上に関する研究を継続し、その成果の実現・公表を目指す予定である。 また、2016年8月からオックスフォード大学にて長期在外研究を実施しており、その中で、本質的要素・本性的要素・偶有的要素の三分法の理論に関する自身の研究成果について、ローマ法・契約法史のセミナー(All Souls Collegeにて開催)の中で報告を行う機会を得て、多くの有益な指摘や助言を得ることができたことも、本研究課題に関する重要な成果であった。
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