2014 Fiscal Year Research-status Report
大陸西欧諸国の構造改革と右翼ポピュリズム政党の台頭
Project/Area Number |
25780098
|
Research Institution | Nishogakusha University |
Principal Investigator |
古賀 光生 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 講師 (50645752)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 政党システム / 比較政治 / 構造改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、西欧において構造改革の影響に伴う生活の不安定化が右翼ポピュリスト政党の支持拡大に結びつく過程について、とりわけ、右翼ポピュリスト政党が支持層の変容にどのように対応したのかを中心に研究を進めた。2014年度は、これまでの研究の成果を論文として発表した。具体的には、オーストリアとデンマークの右翼ポピュリスト政党を事例として、経済政策の転換と支持拡大の関係についての研究をまとめ、学会誌に論文を発表した(「新自由主義から福祉排外主義へ」『選挙研究』第30巻、1号)。また、こうした転換の成否について、党の組織構造から分析する研究を継続して行い、その成果を発表した(「戦略、組織、動員(5)、(6)」『国家学会雑誌』第127巻、1/2号、3/4号)。 さらに、研究成果を踏まえ、議論の射程を広げることにも試みた。たとえば、右翼ポピュリスト政党の政策転換は、これらの党の欧州統合への態度にも影響を及ぼしている。これまで、一部の国の事例ついては既にこの点は論じてきたが(「オーストリア自由党の組織編成と政策転換」『立教法学』第86巻)、こうした点をより一般化する試みについて、その成果の一部をEUSI主催の講演会にて、一部、公表した(「右翼ポピュリスト政党は、なぜ、EUに反発するのか」)。また、今後、日本における排外的な運動の登場と西欧の右翼ポピュリスト政党の台頭を共通の社会構造的な変容を踏まえて議論することが求められる。その準備として、これらの党の台頭を比較の観点からまとめる論文を執筆した(「西欧における右翼ポピュリスト政党の台頭」2015年刊行予定)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、有権者層の変化に伴う政党の戦略的な選択に焦点を置いて、比較分析を進めている。政党内の意志決定過程については資料は十全には公開されていないものの、いくつかの政党公刊資料や、党関係者による書籍等を手掛かりとすることが出来ている。 ただし、以下の二点について、当初の計画からは研究の力点を変更した。まず、比較の対象である。当初の計画では、構造改革の影響について、オーストリア、デンマーク、ベルギーを比較する予定であったが、研究を進める中で、ベルギーの改革が急進政党に及ぼした影響は、オーストリア、デンマークとは位相が異なることが明らかとなった。そのため、オーストリアとデンマークの事例比較を先行して研究し、その成果を発表した。 次に、当初の計画では有権者層の分析に大きな比重を置いたが、この点については、研究を進める上で先行研究の成果を超える新たな知見が得られなかった。そこで、本稿では、有権者層の動向については先行研究に依拠するものとして、従来研究が乏しい、政党の戦略を重視することとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、今後も政党の戦略的な選択を重視して比較分析を進めるものとする。ただし、戦略的な合理性を分析するためには、政党が置かれた制約条件を踏まえる必要がある。本研究では、政党指導者の意志決定を制約する条件として、党の外部の政治制度のみならず、党内の諸アクターの関係を踏まえることとする。 当初の計画では、3年目に成果を海外の学会で発表することを予定したが、既に成果の一部は海外で発表しているため、これは行わないものとする。むしろ、学会発表を踏まえて、英文ジャーナルに論文を投稿することを優先したい。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、研究の初年度において海外に渡航して資料を入手する予定であったが、前年度の3月に別の研究資金によって、渡航が急遽可能になり、その際に入手した資料によって研究を遂行したため、予算に余剰が生じた。また、また、研究計画の段階では、海外の学会にて研究成果の報告を予定してその予算を計上したが、一昨年、他の資金(日本政治学会の渡航援助)により計画を前倒しして渡航と学会発表を行ったため、その分の資金にも余裕が生じた。昨年は、図書購入額を増額するなどして当初予定を一部変更したが、一昨年の余剰分もあって、次年度への繰り越しとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も、海外の学会等に渡航する予定はない。そこで、図書購入額を増額するなどして、繰越金を使用する予定である。
|