2013 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期の在日米軍基地の運用をめぐる合意形成-地域安全保障のなかの日米同盟
Project/Area Number |
25780125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
楠 綾子 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (60531960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日米安全保障条約 / 米軍基地 / 冷戦 / 同盟 |
Research Abstract |
今年度は夏休みに米国で資料調査を行うとともに、日本国内では東京に行く機会を利用して、国会図書館や外交史料館等で数回にわたって資料収集を行った。ワシントンの国立公文書館では、在日米軍基地をめぐる日米両政府の交渉記録や米韓関係、米台関係に関する外交文書など、ヴァージニア州のマッカーサー記念館では、朝鮮戦争時の極東軍の記録や日本国内の施設・設備の使用に関する文書、D・マッカーサー駐日大使の個人文書を閲覧、収集した。 一方、国会図書館や地方の公立図書館では、日本国内各地の米軍基地について、基地闘争を中心に当事者の記録や回想録、地方史に掲載されている資料などを収集した。また外交史料館では、台湾海峡危機の際に外務省や在外公館が残した記録を閲覧した。これらの史資料は、1950年代に在日米軍基地が実際にどのように運用されていたのか、台湾や韓国との関係のなかではどのような位置にあったのかを考える材料になると期待される。 本研究の成果の一部として、『現代日本政治史① 占領から独立へ』(吉川弘文館、2013年)と「冷戦と日米知的交流-下田会議(1967)の一考察」『国際学研究』vol. 3, no. 1(2014年3月)を挙げたい。前者は占領から独立にかけての時期の政党政治に焦点を当てた通史的研究であり、日本の保守政権と米国との関係を検討する基礎となる。後者は、1950年代から1960年代にかけての、知識人対策を中心とする文化冷戦を論じたものである。人々の心を勝ち取る戦いであった冷戦が、日本においてはどのように展開されたかを考えることによって、日米安保条約を基礎とする日米関係をより重層的に理解することが可能となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米軍基地をめぐる1950年代の日米関係について、米国国立公文書館を中心に多数の文書を収集することができた。一方、韓国や台湾、東南アジアと米国との安全保障関係については、資料収集はまだ進行中である。米軍基地を抱える(抱えていた)地域に関する史資料ももう少し収集する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
在日米軍基地の運用をめぐる日米関係がどのように構築され、維持されたのか、さらに研究を深めたい。とくに1955年の重光葵外相の訪米前後に、日本側から提案された日米安保条約の改定案や、事前協議に関する合意形成の過程について、本研究を通じて収集した資料を基礎に事実関係を再構築し、1950年代の日米安全保障関係の実体を明らかにしたいと考えている。また、在日米軍基地が米軍のアジア太平洋戦略のなかでどのような位置を占めどのように機能していたのか、資料的に明らかにすることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
春休みを利用して、米国で資料収集を実施する予定であったが、スケジュールの調整が難しく、次年度以降に実施した方がよいと判断したため。 米国およびオーストラリアでの資料収集のための出張旅費に使用する予定である。
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