2015 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期の在日米軍基地の運用をめぐる合意形成-地域安全保障のなかの日米同盟
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25780125
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
楠 綾子 国際日本文化研究センター, 研究部, 准教授 (60531960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日米関係 / 安全保障 / 米軍基地 / 同盟 / 日本外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は11月に米国(国立公文書館、ワシントンDC)、3月にフィリピン(マニラ地区、現地資料の調査・購入)で海外調査を行い、米国の海外基地政策に関する資料や1950年代の日米の経済関係に関する資料を収集した。米国の海外基地政策のなかで在日米軍基地がもった意味が、フィリピンと比較することでより立体的に理解できると期待される。また、1950年代の日米関係においては、安全保障問題とともに日本の経済・財政状況も重要なテーマであり、とくに再軍備や基地費用の分担問題は両者が密接にからむ問題であった。今回収集した資料によって、その実態を明らかにすることができると考えられる。 他方、国内においては、朝霞市で米軍基地関連の資料を閲覧、収集した。外務省の情報公開制度を利用して、基地をめぐる日米交渉の資料の入手も進めた。いずれも在日米軍基地をめぐる国内政治を分析するのに有用である。 現在までに収集した資料を基礎に、今年度は2本の英語論文("Consensus Building on Use of Military Bases in Mainland Japan"および"From the Base-Lease Agreement" to the "Alliance": US-Japan Security Relations in the 1950s. 前者はアメリカ学会の英文ジャーナルに掲載決定。後者はDavid Wolf and Yasuhiro Izumikawa ed., Japan in the Cold War, Stanford UPへの掲載を検討中)を執筆するとともに、オーストラリアでの学会での報告を行った。米軍基地の運用に関する合意の形成過程を明らかにするとともに、日米の安全保障関係のなかに基地を位置づけることについて合意が形成される過程を考察した論考である。基地の提供と運用を核とする日米の安全保障関係が1950年代に成立する過程を実証的に明らかにするうえで、これらはひとつの基盤となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの3年間で、米国の国務省や国防総省関係の文書はおおむね調査、収集したと思われる。ただ調査、分析を進める過程で、米国議会の動きを視野に入れる必要があると考えるようになり、議会関係の公文書や有力議員の個人文書に調査対象を広げたい。イギリスやオーストラリアなど利用可能な関係国の文書も、主要な文書には到達したと思われるが、周辺の文書にもあたってみる必要があるように思われる。 今年度1年間で、収集した資料の分析と論文執筆はかなり進んだ。それでも3年間で収集した膨大な量に上るため、分析に時間がかかっている。同様に、論文としてまとめる作業も当初の予定よりもう少し時間がかかる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、引き続き米国を中心に資料の調査・収集作業を行うが、中心的な作業は史資料の分析とする予定である。またこれを基盤として論文の執筆を進めていく。防衛分担金をめぐる日米交渉や在日米軍基地の運用と役割について、あらたな分析視角を提示できるよう考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
2月から3月にかけて、アメリカでの資料収集を行うことを考えていたが、イギリス・アイルランドへの出張(内閣府の有識者派遣事業による)が入り実施できなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカでの史料調査・収集の旅費に充当することを考えている。8月から9月前半の間で2週間ほど実施する予定である。また、マイクロフィルム化された米国の公文書の購入費用としても使用したい。
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Research Products
(4 results)