2015 Fiscal Year Research-status Report
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25780238
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
森永 泰史 北海学園大学, 経営学部, 教授 (10405649)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インハウスデザイナー / シャープ / ローテーション / 技術開発への関与 / 特許データ / 意匠データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、意匠データと特許データを用いて、デザイナーのイノベーションへの貢献度の実態解明に注力した。これは前年度の報告書の「今後の推進方策」のところで述べたように、インタビュー調査で明らかになった事柄を定量的に裏付けるためである。そして、それらの成果を、いくつかの学会で報告するとともに、2本の論文にしたためた。 具体的には、インタビュー調査を行った2社(シャープと東芝)のうち、シャープを取り上げ、特許と意匠のデータベースを活用して、デザイナーによる特許出願状況やデザイナーのローテーションの実態を明らかにした。前者は、デザイナーの技術開発への関与度合の変遷を調べるためであり、後者はデザイナーのイノベーションのためのスキルの獲得機会の変化を調べるためである(※ローターションが活発化するほど、イノベーションのためのスキルの獲得度合が上がると仮定している)。その結果、インタビューでは、近年、デザイナーの技術開発への関与度が徐々に低下している様子がうかがえたものの、定量データからはそのような傾向は見受けられなかった(時間の経過よりも、むしろ技術革新の有無やモジュール化の進展度合いがデザイナーの特許出願行動に大きな影響を与えていた)。ただ、その反面、デザイナーのローテーションは徐々に減少しており、デザイナーがイノベーションのためのスキルを獲得することが徐々に困難になりつつあることがうかがえた。 よって、このことからは、シャープでは、デザイナーの技術開発への関与度は従来とそれほど変わらないものの、デザイナーがイノベーションのためのスキルを獲得する機会を喪失していることがうかがえた。 なお、本年度もそれらの作業と並行して、文献調査を引き続き行っている。その成果をいくつかの論文にしたためている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上の「研究実績の概要」のところでも述べたように、これまでのインタビュー調査に加え、定量データによるその裏付け活動も進んでおり、順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究の最終年であるため、これまでの文献調査で得られた知見と、インタビュー調査で得られた知見、定量調査で得られた知見の3つを統合して、総括する必要がある。ただ、得られたデータが膨大なため、作業を次の3段階に分けて進めていきたい(①デザイナーの技術開発への関与の実態解明とそれに影響を与える要因の分析→②デザイナーのローテーションの実態解明とそれに影響を与える要因の分析→③それらの両者をまとめたもの)。これらの作業を通じて、「デザイナーが技術革新において果たす役割と、そのような役割を実行するためのマネジメント」を明らかにしてみたい。
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