2014 Fiscal Year Research-status Report
マーケティング活動の投入産出関係に対するアカウンタビリティの管理会計学的研究
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25780294
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
君島 美葵子 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (50645900)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マーケティング管理会計 / マーケティング・アカウンタビリティ / マーケティング監査 / マーケティングROI / マーケティング・メトリクス / 販売費 / 業績評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は,2項目に集約できる。まず,アカウンタビリティの定義を管理会計とマーケティングの2領域から整理した。アカウンタビリティは,会計学にとどまらずさまざまな研究分野で議論されており,非常に広範である。そのため,本研究課題を解決するために適用可能なアカウンタビリティ概念を明示する必要があった。先行研究では,管理会計とマーケティングそれぞれの研究領域において,「管理会計上のアカウンタビリティ」と「マーケティング・アカウンタビリティ」が定義されている。それらの定義の内容から共通点を見いだすことによって,従来,別領域で取り上げられていた2つのアカウンタビリティを同じ俎上に載せることが可能になった。その共通点は,企業活動の投資(費用)対効果を測定するところにあった。 その一方で,マーケティング活動の投資対効果の測定に関連して,マーケティング監査についても研究を進めた。一般に,アカウンタビリティを果たす上で,監査の必要性が主張されている。マーケティング活動でアカウンタビリティを果たすことに注目すると,その場合の監査は「マーケティング監査」と呼ばれる。マーケティング監査において投資(費用)対効果を評価するためには,評価基準と評価の採用基準の判断が重要になる。特に昨今は評価基準として,マーケティングROIの活用が見られ,マーケティング・コストを費用ではなく投資として捉えるところに大きな意義がある。マーケティングROIは,分母がマーケティング活動へ投資された費用とし,分子がその投資から得たリターンを前提としているが,先行研究によってその定義に相違が見られることから,既存の定義の再検討や新たな計算構造の提示が求められることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の平成26年度の計画では,「日本企業を対象としたマーケティング活動の投入産出関係に関する実態調査,調査結果のまとめと検証」を掲げている。しかし,本研究課題を遂行していくにつれて,管理会計研究でマーケティング・アカウンタビリティの定義を議論するためには,複数のアカウンタビリティの比較,整理が必要となることが明らかになった。そのような理由から,郵送質問票によるアンケートを実施せず,本年度研究の6~7割をアカウンタビリティの定義の理解,管理会計研究への適用を考察することとした。なお,平成26年度の研究成果は,学会報告「マーケティング活動のアカウンタビリティと管理会計」(日本会計研究学会第73回大会,2014年9月5日)と論文「営業活動に対するアカウンタビリティの考察―管理会計研究の見地から―」(『産業経理』第74巻第3号,2014年10月)で公表した。これらの研究成果の要約は次の通りである。 アカウンタビリティの概念は,非常に広範であり,その1つに会計上のアカウンタビリティがある。会計上のアカウンタビリティには,管理会計上のアカウンタビリティが含まれる。管理会計上のアカウンタビリティの範囲内で,マーケティング活動の効率性に着目すると,その評価指標の1つとしてマーケティングROIの活用があげられる。ただし,マーケティングROIの公式は,研究者によって相違が見られるため,既存の計算構造の再検討が求められる。 また,平成26年度の当初計画では,郵送質問票に代えて企業インタビュー調査を前倒しで行う場合も想定していたため,本研究の進捗を考慮して,企業インタビュー調査を推進することにした。本研究課題では,マーケティングとしてダイレクト・マーケティングを取り上げているため,調査対象をダイレクト・マーケティング支援組織とした。現在,複数の企業へのインタビューに着手している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,マーケティング・アカウンタビリティの定義に関する基礎研究を行い,マーケティング監査を通じてどのようなマーケティング・メトリクスが活用されるのかを理論的側面から明らかにした。また,ダイレクト・マーケティングの役割を担う組織のなかで,マーケティング監査がどのように機能しているのかを調査するため,企業インタビュー調査に着手した。当該年度の研究成果を踏まえた今後の推進方策は,以下の2点である。 1点目は,ダイレクト・マーケティングを推進する企業に調査対象を絞ってインタビュー調査を実施することである。たとえば,誰(どのような組織)に対してアカウンタビリティを果たさねばならないのか。マーケティング・アカウンタビリティを果たすために,どのようなマーケティング・メトリクスが使用されているのか。マーケティング・アカウンタビリティを果たすための組織体制は整備されているのか。このような質問を大枠として,実態の把握に努めたい。 2点目は,過年度の理論研究と,インタビュー調査を通じた企業の経験に基づく事例研究とを比較検証することである。過去2年間の研究内容は,マーケティング管理会計の変遷とその現状理解,マーケティング活動の投資効果測定のために用いられるマーケティング・メトリクス,その測定で適用されるマーケティング監査を対象とした。上記のような質問項目を通じて現在までに取り組んできた理論的研究と企業インタビュー調査から得られた情報との相違点を明らかにすることによって,本研究課題の結論をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度からの次年度使用額繰越は,以下の理由から生じた。まず,当初予定していた研究打ち合わせの回数が減少したことによって,支出の削減につながった。次に,学会での資料収集,および学会報告での旅費支出が申請時よりも少額であったことから金額に余剰が出た。さらに,研究時期を前倒しした業界ヒアリングや企業インタビュー調査の回数が増えたものの(合計7回),いずれも近距離であったため,旅費支出が当初予定を下回った。なお,平成26年度の研究として,「アカウンタビリティ」そのものの概念に関する基礎研究が必要となったため,郵送質問票の実施が時期尚早であると判断した。このことから,質問票送付費の支出は計上されていない。以上のとおり,当初計画よりも総使用額が下回ったことから,繰越が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,前年度から継続してダイレクト・マーケティングを推進している企業インタビュー調査を予定している。当初計画では,国内5回の調査旅費を計上しているが,企業訪問回数の増加や企業所在地の遠近により,旅費そのものの増額が見込まれる。また,コンタクト・センターの拠点を海外に置いている企業も多いことから,海外の調査旅費を支出する可能性がある。さらに,インタビュー時の記録をテープ起こしするための支出も必要不可欠である。当初計画では,テープ起こし費用をその他経費に含めていなかったが,前年度使用額繰越があるため,十分賄うことができると考えられる。加えて,前年度から継続している文献研究を並行して行うため,研究用書籍の購入も予定している。このように,最終年度として本研究課題の結論を導き出すために,研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)