2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会変動にともなうコモンズの変容過程に対する計量社会学的アプローチ
Project/Area Number |
25780318
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
金澤 悠介 岩手県立大学, 総合政策学部, 講師 (60572196)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | コモンズ / 社会的ジレンマ / 社会変動 / 計量分析 / コモンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は入会林野を対象に、社会変動にともなうコモンズの変容過程を実証的・理論的に解明することを目指す。以上の目的を達成するために、平成27年度は、「1.入会林野利用の変化についてのパネルデータ構築」と「2.高度経済成長とコモンズ管理の関係についての計量分析」を行った。 「1.入会林野利用の変化についてのパネルデータ構築」では、平成26年度に引き続き、『昭和5年全国山林原野入会林野慣行調査』(以下、昭和5年調査と略記)と『昭和49年全国山林原野入会林野慣行調査』(以下、昭和49年調査と略記)に共通して記載されている事例を対象として、『昭和5年調査』に記載されている内容をWordファイルへ転記する作業を行い、完了させた。 「2.高度経済成長とコモンズ管理の関係についての計量分析」では、高度経済成長という社会変動がコモンズ管理にどのような影響を及ぼしたのかを解明するために、『昭和49年調査』の再分析を行った。ここでは、経済発展という社会変動によって、所有権理論が予測するように、個人分割というかたちで管理される入会林野の割合が増加したのかを検討した。主な知見は以下のとおりである。(ⅰ)個人分割というかたちで管理される入会林野の割合は『昭和49年調査』に記載されたものの10%ていどであり、少数派であった。(ⅱ)70%ちかい入会林野は集落の直轄的な指示のもと住民が利用するというかたちで管理されていた。(ⅲ)集落に居住していないものであっても、その利用権を保持できる入会林野は15%存在するが、そのものはかつての集落住民に限定されるという点で、入会林野の管理は集落という枠組みで展開されていた。以上の結果から、高度経済成長という社会変動が生じたとしても、コモンズの管理形態は所有権理論が予測する方向では変化せず、集落が共同で管理するという形態は維持される可能性が高いことを議論した。
|
Research Products
(4 results)