2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780367
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
外山 美樹 筑波大学, 人間系, 准教授 (30457668)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 楽観性 / 悲観性 / 適応 / パフォーマンス / 自己調整 / コーピング方略 |
Research Abstract |
これまで,数多くの研究において,特性的楽観性(以下,“楽観性”)の高い人は,ストレスフルな事態に陥った時に,接近型のコーピング方略をとることが示されており(Carver & Scheier, 2002; Segerstrom, 2007),このことが,楽観性が適応的結果に結びつく理由として考えられていた。 本研究(平成25年度に実施した研究)では,178名の大学生を対象にして,楽観性ならびに特性的悲観性(以下,“悲観性”)と接近,回避型のコーピング方略の関連性において,経験したストレスフルな出来事の主観的な重要性が影響を及ぼすのかどうかを検討した。結果,楽観性ならびに悲観性と接近,回避型のコーピング方略の関連性において,経験したストレスフルな出来事の主観的な重要性が調整変数となることが示された。つまり,体験したストレスフルな出来事の重要性が高い場合には,楽観性の高い人は低い人よりも肯定的解釈を多く用いることが示された。一方,ストレスフルな出来事の重要性が低い場合には,楽観性と肯定的解釈との関連性は見られなかった。また,悲観性の低い人は高い人よりも,体験したストレスフルな出来事の重要性が高い場合に,肯定的解釈を用い,放棄・諦めや責任転嫁といった回避型のコーピング方略をとらないことが示されたが,体験したストレスフルな出来事の重要性が低い場合には,このような傾向は見られなかった。これらの結果は,楽観性の高い人ならびに悲観性の低い人が自己調整能力の高さを備えていることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,楽観性の高い人の情報処理過程について検討する予定であったが,ごく近年の先行研究において,楽観性の高い人の自己調整能力の高さが示唆されていることから,本年度は,この点について検討することにした。 上記の「研究実績の概要」で述べた研究を実施し,楽観性の高い人は,自己調整能力が優れていることを実証し,得られた成果を論文投稿まで行うことができたため,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施した研究において,楽観性の高い人は,取り組むべき目標が自身にとって重要であると認知した時のみ,接近的な目標追求を行っており,そのことが,楽観性が適応的結果に結びつく理由として示された。 今後は,楽観性の高い人が,なぜ,重要性が高いと認知した情報のみを処理しているのか,情報処理のメカニズムの観点から検討する予定である。楽観性の高い人はポジティブな感情を抱きやすい(Scheier & Carver, 1992)が,ポジティブな感情を体験している時には刺激の全体を処理しやすいこと(Baumann & Kuhl, 2005)が先行研究で示されている。物事を全体的に処理する傾向がポジティブな信念や状態と関連しているならば,楽観性の高い人の認知的処理の柔軟性を説明できるかもしれない。また,Segerstrom(2001)は情動ストループ課題を用いて,悲観性の高い人がネガティブな刺激にのみ注意を向けているのに対して,楽観性の高い人はポジティブな刺激とネガティブな刺激の両方に注意を払っていることを明らかにした。 楽観性の高い人の情報処理のメカニズムを検討した研究は数が少なく,今後は楽観性の高い人の情報処理のメカニズムについて,詳細に検討していく予定である。
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Research Products
(5 results)