2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後直後の公立養護学校設置プロセスの研究―門司市立白野江養護学校を事例に
Project/Area Number |
25780484
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
雪丸 武彦 長崎県立大学, 経済学部, 講師 (60614930)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市衛生 / 学校衛生 / 貧困対策 / 特別教育 |
Research Abstract |
本年度は主に明治40年から大正6年までの「門司新報」を福岡県立図書館にて収集し、門司市における当時の社会問題、それに伴う教育課題の顕出、付随する教育施策の状況を確認した。これにより以下の点が判明した。 門司市は港湾都市として1889年以降急速な発展を遂げ、日本-アジア間の輸出入の拠点となり、また工場の建設が進み、他自治体からの流入者が増加した。これにより問題となっていたのは市民の身体に影響を与える都市衛生問題及び工場労働者や水上生活者の子どもの貧困問題である。第1に、外国との交易の最前線に置かれることにより門司市ではコレラの感染がほぼ毎年のように問題となっていた。また、赤痢やペスト、トラホームといった伝染病にも悩まされることとなった。このため門司市は門司港に入る船舶の管理を徹底するとともに、市内の清掃活動(「清潔法」)を夏季、秋季、また臨時に実施していた。学校には学校衛生を担当する者を置きその対策を行った。 第2に、門司市には出稼ぎ労働者、船舶生活者等の流入者が増えていたが、その多くが貧困者であり、その子どもの中には就学しない者もいた。明治44年度、家庭状況に応じて教育を行い、国民の義務を果たさせようとの市長の考えから、貧困児を対象とした学級を市内小学校に開き、授業料を取らず、学用品や食事を与えて教育を受けられるようにした(「特別教育」)。 以上のように明治時代後期~大正時代前期において、門司市においては都市衛生問題及び貧困問題へ対応するための教育施策として学校衛生担当者の設置施策、「特別教育」施策が実施されていた。この間それぞれの施策は独自のロジックをもち、交わることなく実現されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新聞資料収集が容易に進むと考えていたが、予想以上に研究上の重要な意味をもつ記事が多く、やや収集のペースが遅くなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに重要な資料発掘の可能性が高いため、福岡県立図書館での資料収集のペースを上げていきたい。また、他大学の研究者に研究協力を依頼して資料収集を効率的に進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集を一定程度終えた段階でその保存をするための物品の購入を予定していたが、予定した段階までに至らず、購入することができなかった。 資料収集のペースを上げると同時に資料保存を図るため、購入を予定した物品を次年度早期に購入することとしたい。
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