2013 Fiscal Year Research-status Report
日本美術の諸様式をキャッチフレーズ化して感受・理解させる鑑賞教育方法の実践的研究
Project/Area Number |
25780529
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
有田 洋子 島根大学, 教育学部, 講師 (70598143)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 美術教育学 / 鑑賞教育 / 日本美術 / 様式 / 言語 / キャッチフレーズ / SD法 / 仏像 |
Research Abstract |
本研究は、日本美術の諸様式のキャッチフレーズ化によって鑑賞教育方法の根拠を明確にし、年齢段階に対応した方法論への深化・精密化を考究し、以下の成果を得た。 1.美術史記述における感情語の頻出度及び特性の解明:戦後の代表的な日本美術史概説書を基にコーパス作成・分析等を行い、様式ごとの形容詞等の感情語の頻出度や特性を解明した。さらに、試行的に大学生の記述を収集してコーパス作成・分析を行った。2.質問紙及び教材の作成:上記結果と実作品の調査結果を総合して、語彙発達研究を参照の上、SD法調査の質問項目を作成した。また実作品の調査から、質問紙やカルタ教材における画像の妥当性を検証した。3.SD法による様式感受実態の解明:仏像7様式について、小学校・中学校・高等学校の全学年の児童生徒及び大人を対象に、SD法による質問紙調査を行い、調査協力者群及び様式ごとの感受実態を解明した。各様式プロファイルは小学4年生以降ほぼ同形となること、そして各様式プロファイルの特徴、さらにそれらが3類型に分類できることを明らかにした。絵画も試行的に大学生に同様の調査を実施した。4.シソーラス及び教材の試行的作成:諸様式を表す感情語のシソーラス及び教材を試行的に作成した。シソーラス編集は、上記結果から抽出した感情語を、美的質ごとに類型化し、年齢段階に応じて調整した。教材は、シソーラスを参照して作成した様式のキャッチフレーズを読み札、作品画像を絵札としたカルタを作成した。児童生徒によるキャッチフレーズ作成も検討した。シソーラス参照の効果は次の試行的実践からも推察された。5.大学での試行的実践:大学生対象の授業で上記教材を試行的に実践して、その有効性や課題を抽出・検討した。 以上の研究成果は、平成26年3月20日発行『美術教育学』掲載論文、そして平成26年3月28日の第36回美術科教育学会奈良大会口頭発表で公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.まず、基礎研究として、戦後の代表的な日本美術史概説書を基にコーパス作成・分析等を行い、様式ごとの形容詞等の感情語の頻出度や特性を解明できた。さらに、試行的に大学生の記述を収集してコーパス作成・分析へ発展できた。2.上記結果と実作品の調査結果を総合して、SD法調査の質問項目の作成、質問紙及びカルタ教材に用いる作品画像の妥当性の検証をできた。3.仏像7様式について、小学校・中学校・高等学校の全学年の児童生徒及び大人を対象に、SD法による質問紙調査を行い、調査協力者群及び様式ごとの感受実態を解明できた。グラフ化した各様式プロファイルは、小学4年生以降はほぼ同形となること、各様式プロファイルの特徴を指摘した。特筆すべきは、様式間の比較を行い3類型に分類できることを発見したことである。絵画に関しても試行的に大学生に対して同様の調査を実施できた。4.諸様式を表す感情語のシソーラス及びカルタ等の教材を試行的に作成できた。シソーラスを活用し、児童生徒がキャッチフレーズを作成する発展教材も考案できた。5.大学生対象授業で上記教材を試行的に実践して反応を収集し、提案の教育方法の有効性や課題を抽出・検討できた。6.以上の研究成果を、平成26年3月20日発行『美術教育学』掲載論文、平成26年3月28日第36回美術科教育学会奈良大会口頭発表で公表できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.シソーラス及び教材の作成:前年度の調査結果を基に、明確な根拠をもった、シソーラス及びキャッチフレーズ教材を完成させる。 2.協力校での実践:作成した教材を、島根県及び茨城県の小学校・中学校で実践する。教育内容・指導方法や授業計画を担任教員と調整後、実践して検証する。授業の実際を記録し、授業アンケートを実施する。島根県及び茨城県の実践予定学校の教員とはこれまでに研究会等を通して研究についての共通理解ができており、効果的な実践が期待される。また、複数県で実践を行うことによって鑑賞教育方法の妥当性を地域性によらない一般性をもって検証できる。 3.実践の考察:授業の実際、カルタやアンケートの回答等を分析し、教育的有効性を検証する。特に、美術史及び実態調査に基づくキャッチフレーズ化及び教材化の原理は妥当であったか、年齢段階に対応できていたかを検証する。問題があった場合、美術史記述・様式把握の分析、シソーラス編集、キャッチフレーズ化、教材化まで遡り再検討して改善し、次年度再実践する。研究が当初計画通りに進まない時も同様にする。各学校教員から協力の承諾を得ている。万一、予定学校で実践できなくなった場合、他の小学校・中学校の教員に協力を依頼することで対応する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度、研究の進展によって膨大な資料・データが得られた。資料・データを活かして平成26年度実施のシソーラス及び教材作成を深化させることができる。その資料・データの整理補助に支払う謝金が必要となった。さらに平成26年度に計画している授業実践結果の分析においても同様の謝金が必要であり、当初計画よりも謝金が必要となった。また平成26年度に諸学校で効果的に授業実践するにあたって持ち運びの容易な軽量ノートパソコンが必要となった。 以上から、平成25年度助成金を使い切らないでおき、それを平成26年度助成金と合わせて、謝金及び軽量ノートパソコン購入費に充てることとした。 次年度使用額は平成26年度助成金と合わせて以下のように使用する。 次年度使用額は主として謝金及び軽量ノートパソコン購入費に充てる。さらに、シソーラス作成のため、語彙及び語彙発達関係図書・日本美術関係図書が必要である。教材作成のため、日本美術関係図書・美術鑑賞教育関係図書が必要である。また教材作成にあたっては、実作品を目視して様式分析が適切であったかどうかも検討する。そのために、東京国立博物館、京都・奈良の古社寺及び博物館等での調査を行う旅費が必要である。カルタ等の教材を作成するためにプリンタ用インク、印刷用紙、文房具、複写費が必要である。実践は、研究代表者の勤務地の島根県内学校だけでなく、茨城県内学校でも実践する。打ち合わせや実践等に赴くための旅費、また教材等を運ぶため運送費等が必要である。研究成果を公開するため、論文掲載費、学会口頭発表参加費及び旅費が必要である。
|
Research Products
(2 results)