2013 Fiscal Year Research-status Report
電流により誘起される磁界作用トルクを用いた磁気高周波検波素子の高感度化
Project/Area Number |
25790045
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 利映 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 研究員 (10635303)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | スピントルク / スピントロニクス / ダイオード / 磁気共鳴 |
Research Abstract |
スピントルク・ダイオード特性の素子間のばらつきを抑制する課題と検波感度向上に取り組んだ。 まず、漏れ磁界の抑制による磁化ダイナミクスの均一性の向上を期待し、微細加工中のエッチング条件の検討を試みた。同一基板上に(1)従来通りMgO層のみならず下部の強磁性層までエッチングした素子と(2)MgO層止めエッチングした素子を作製し、それらのダイオード特性を比較した。後者の素子で漏れ磁界が抑えられるはずであったが、磁気抵抗(MR)比の低下などで検波感度が前者の従来型素子の場合の1/10という結果となった。検波感度を向上させる目的を優先させるため前者のエッチング条件を選んで研究を遂行することとした。 一方で低い抵抗面積積(3.8 オーム・平方ミクロン)で高いMR比(182%)を示す面内磁化膜を用いた素子でダイオード特性が素子間でどのようにばらついているのか調べる実験を行った。同一設計の複数の素子に対して、面内外部磁界を0.5 kOeに固定しその角度を振ってダイオード・スペクトルを測定した。すると磁化自由層に由来するピークともう一つのピークが、ある磁界角度で重なる特徴が見られた。ダイオード測定を行った素子のうち4割程度の素子が類似した磁界角度依存性を示すことを見出した。さらにそれらの素子では、2つのピークが重なる磁界角度において、6 GHzの動作周波数で検波感度が234 mV/mW(DCバイアス電流0.4 mAの場合)および201 mV/mW(ゼロDCバイアス電流の場合)に達した。これらは5 GHz以上の動作周波数では最高のスピントルク・ダイオード検波感度である。また、その磁界角度におけるピークの反対称成分のバイアス依存性もサンプル間でばらつきが小さく再現性が高いことを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同一設計の複数の素子において、ダイオード・スペクトルの角度依存性を測定した結果、過去の研究に比べ、ばらつきが小さいことがわかった。つまり、微細加工における素子間のばらつきを抑制することができた。また、高周波側(6 GHz)での検波感度向上に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. ダイオード・スペクトルの面内磁界角度依存性において磁化自由層に由来するピークと重なるもう一方のピークの起源を特定する。これまでの測定結果から、それは(上部の磁化自由層とMgO層をはさんで対向する)下部の強磁性層(SAF層)に由来するピークであると推定している。平成26年度は、マイクロマグネティック(およびマクロスピン)・シミュレーションを行い、実験結果との整合性を確認する。 2. ダイオード・ピークの反対称成分の起源を特定する。反対称成分の起源として、フィールド・ライク・トルク(FLT)と電流磁界トルクが考えられる。マイクロマグネティック・シミュレーション上で、「スピン・トランスファ・トルク(STT)とFLTを考慮した場合」の結果と「STTと電流磁界トルクを考慮した場合」の結果を比較することで、起源の特定を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究で、スピントルク・ダイオード効果の測定で研究が律速されることがわかった。ノイズを抑えて高周波測定するためには測定に時間をかける必要があるためである。しかし、現在使用している信号発生器は共用装置であり、本研究に使用できる時間が限られている。 上に述べた問題を解決するため、平成25年度から予算を繰り越し平成26年度の予算額と合わせて、おおよそ300万円のアナログ信号発生器を購入する。これによりスピントルク・ダイオード効果の測定のスピードアップを図る。
|