2014 Fiscal Year Annual Research Report
電流により誘起される磁界作用トルクを用いた磁気高周波検波素子の高感度化
Project/Area Number |
25790045
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 利映 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 研究員 (10635303)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピントルク / スピントロニクス / ダイオード / 磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピントルク・ダイオード(STD)の(検波)感度向上に関する課題に取り組んだ。
平成25年度の研究で自由層に由来するピークと平行磁化配置では自由層のピークよりも高周波数で観測される他方のピークが重なる磁界角度において感度が向上する結果が得られていた。平成26年度はマイクロマグネティック・シミュレーションを用いて、他方のピークは参照層に由来する可能性があることを明らかにし、さらに自由層と参照層が逆位相で振動することで感度が向上することも明らかにした。自由層と参照層の逆位相振動は、高周波数帯・ゼロDCバイアスという感度向上が難しい条件においても感度向上を可能にする方法である。この方法を提案する学会発表を平成26年度中に国内(応用物理学会)と国外(MMM)で行った。
さらに、自由層と参照層が逆位相振動するために必要な条件を調べるために、参照層の磁化ダイナミクスによるSTD特性をマクロスピン・モデルによって解析的に記述した。この理論モデルでは、参照層は(1)下部の磁化固定層と反強磁性結合し、 (2)自由層と磁化固定層の両方とスピン・トランスファ・トルク(STT)を介した相互作用をする と仮定した。得られた解析式から、ダイオード・スペクトルにおける参照層に由来するピークの符号は、磁化固定層とのSTTを介した相互作用の大きさによって変化することが明らかとなった。さらに、自由層とのSTTを介した相互作用よりも磁化固定層とのそれが大きい方が、逆位相振動に有利であるという知見も得られた。また、本研究で得られた解析式は、ダイオード・スペクトルから参照層に働くSTTを介した相互作用の大きさを定量的に評価することを可能とするものである。本研究結果について、平成26年度中にJJAP誌に論文発表を行った。また、平成27年度中に国際学会(ICM2015)において口頭発表を行うことが確定している。
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