2013 Fiscal Year Research-status Report
格子ゲージ理論を用いた強結合素粒子模型の数値シミュレーション
Project/Area Number |
25800139
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大木 洋 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究機構, 助教 (50596939)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 素粒子 / 格子ゲージ理論 |
Research Abstract |
本研究計画は、格子ゲージ理論を用いたゲージ理論の第一原理計算に基づく数値計算や、対称性等に基づいた場の理論の有効理論を用いた解析を行い、量子色力学(QCD)以外の強結合理論や共形ゲージ理論の低エネルギーダイナミクスの解明を試み、素粒子標準模型を超えた新たな素粒子像の可能性を探索する事である。特に、格子ゲージ理論を用いた手法では、ゲージ理論の数値計算を行い、基本的な格子模型の相構造の準備研究の後、大きな体積を用いた連続理論にも対応する相構造の研究、擬スカラー粒子、スカラー粒子スペクトラム等の低エネルギー物理量の計算を通して、その模型の非摂動論的性質を理解する事を目指す。平成25年度は、ゲージ理論の相構造に関する研究及び、標準模型を超えた物理の解明において重要な様々なハドロンスペクトラムの測定に関する研究を行った。素粒子の現象論的関心としては、近年LHC実験において質量が125GeV程度のHiggs粒子が発見されたのを踏まえ、その性質の解明や背後に存在する新たな物理法則の発見が重要である。特に、標準模型を超えた物理として強結合ゲージ理論を考える事が出来、そのような強結合理論に存在する複合スカラー粒子は、標準模型におけるHiggs粒子に対応すると考えられるため、その質量測定が極めて重要とある。通常のQCDのように擬スカラー粒子が擬南部-Goldstone粒子として振る舞うような状況では、スカラー粒子の測定は困難であるが、共形相近傍と考えられる大きなフレーバー数を持つQCDでは、比較的良い統計精度で質量スペクトラムのシグナルが得られる事が確認された。また、SU(2)ゲージ理論における相構造の解析では、格子ゲージ理論のモンテカルロ数値計算の結果、強結合領域においてPolyakov loop期待値、Plaquette期待値、カイラル凝縮に不連続性が存在する事を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
格子フェルミオン演算子を用いたスカラー粒子測定に関する数値計算法の進展が成され、本研究に応用する準備が進んでいる段階である。また、本研究の対象であるSU(2)ゲージ理論においても、強結合領域における相転移現象と思われる構造を発見する事が出来た。これを元に相転移近傍の性質の解明を進める事が出来る。また本研究で計画している強結合ゲージ理論におけるハドロンスペクトラムの計算やスケーリング法の数値計算データや解析手法の開発も着実に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で培われた格子フェルミオンにおけるハドロンスペクトラム、特にスカラー粒子測定の計算手法を進展させ、本研究の主要な目標であるSU(2)ゲージ理論への応用を視野にいれ、解析手法の改良に取り組んでいる段階である。また、より精度の高い計算結果が得られるよう、引き続き解析に必要なゲージ配位生成を行い、本研究に応用していく予定である。相構造の研究により見出された不連続性については、この不連続性が何らかの相転移現象と関連している可能性がある。現在のところ、この相転移点は極めて強結合領域であるため、格子理論特有の非物理的な一次相転移である可能性があるが、有限温度効果によるカイラル対称性の破れの相転移である可能性も残されており、その相転移の性質を見極める必要がある。このような相転移の性質の解明は、理論の相構造の解明だけでなく、標準模型を超えた物理に現れる有限温度の電弱相転移現象として考える事も出来るため、引き続き、その構造の解明が重要である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、本年度予定であったイギリスの大学との研究打ち合わせのための出張を行う必要がなくなった事、購入予定のコンピュータを取りやめた事等により、次年度使用額が生じた。 本年度は、前年度分も踏まえて、九州大学情報基盤研究開発センターの研究用計算機の計算機使用料に用いる事により、本研究に必要な計算を進める事が出来る。また当初の予定であった外国の研究会での研究発表に加え、研究打ち合わせのための海外への出張も行い、昨年度行えなかった格子ゲージ理論の非摂動的繰り込みの研究の進展についての情報収集を行う予定である。
|
Research Products
(8 results)
-
-
[Journal Article] Light Composite Scalar in Twelve-Flavor QCD on the Lattice2013
Author(s)
Yasumichi Aoki, Tatsumi Aoyama, Masafumi Kurachi, Toshihide Maskawa, Kei-ichi Nagai, Hiroshi Ohki, Enrico Rinaldi, Akihiro Shibata, Koichi Yamawaki, and Takeshi Yamazaki
-
Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 111, 162001
Pages: 1-5
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-