2015 Fiscal Year Annual Research Report
格子ゲージ理論を用いた強結合素粒子模型の数値シミュレーション
Project/Area Number |
25800139
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大木 洋 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (50596939)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 格子ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、素粒子標準模型を超えた物理の候補と成り得る強結合ゲージ模型に対し、格子ゲージ理論を用いた第一原理に基づく数値計算を行う事で、未知の強結合物理現象や新粒子の質量スペクトラムの性質を明らかにする事である。 現在、欧州原子核研究機構CERNの大型ハドロン衝突型加速器において、125GeVのヒッグス粒子の発見と、750GeV近傍に新粒子と思われる兆候が見出されており、そのような粒子が実在する場合、どのような新物理模型が候補となりうるかを見極める事が極めて重要な研究課題である。本研究では強結合ゲージ模型として、大きなフレーバー数を持つゲージ理論によるテクニカラー模型を考えており、複合スカラー、複合擬スカラー粒子がそれぞれ上記粒子に対応する候補となりうるため、その性質の解明が重要である。特に後者の複合擬スカラー粒子の場合は、フレーバー一重項擬スカラー(η')粒子とも関連するため、極めて興味深い粒子である。本年度は、大きなフレーバー数を持つ量子色力学のη'のスペクトラムの格子ゲージ理論を用いた研究を行い、その結果、通常の量子色力学とは異なり、極めて大きな質量を持つ可能性がある事が判明した。これは、大きなフレーバー数のフェルミオンが持つU(1)軸性量子異常の効果が強められた事に起因すると考えられ、ゲージ理論の量子異常の理解につながる極めて興味深い成果である。本研究の予備的な研究成果は、Lattice 2015国際研究会やアルゴンヌ国立研究所で開かれたLattice for Beyond the Standard Model Physics 2016研究会において発表した。 現在、より統計量を増やした精密な計算を実行しており、学術論文の準備を行っている段階である。また、フレーバー一重項スカラー(σ)粒子も含めた質量スペクトラムの性質をまとめた論文も執筆中であり、近い将来その成果を発表する予定である。
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