2015 Fiscal Year Research-status Report
相対論的量子モンテカルロ法の開発と内殻励起への応用
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25810016
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中塚 温 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (80591065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子モンテカルロ法 / 相対論効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度初期は、所属機関の変更に伴う計算機環境の変更・整備を行った。 昨年度に引き続き内殻励起状態への相対論的VMC,DMC計算の適用可能性の検討を行った。これまで開発したプログラムを利用して、一酸化炭素のHartree-Fock波動関数をもとに、酸素内殻に対応する軌道から非占有軌道へ置き換えた一重項・三重項の行列式を試行関数とし、量子モンテカルロ法でエネルギー期待値の計算を行った。現在の実装ではスピン-軌道相互作用を含んだ計算は、変分モンテカルロ法のみの対応であり、スピン変数のサンプリングが不安定であるため、相対論効果による軌道の変化のみ考慮する形で、スピン-軌道相互作用項を含まない、非相対論版に類似の方法をとった。一週間弱程度の短時間のZORA Hamiltonianに基づく拡散モンテカルロ法では試行ごとのエネルギー期待値のばらつきが大きく、現在その原因を検討している。この原因として、内殻電子に対応した成分が取り除かれることにより参照となる電子密度に空白が生じることでサンプリングの不安定性が増加すること、Jastrow項の最適化が不十分である可能性、積分空間を探索するのに必要なウォーカー数・サンプリング時間の不足、電子密度に対応したドリフトとランダムな拡散がバランスする適切なタイムステップをとれていない可能性などが考えられるが、現在それぞれの場合に考えられるシミュレーション・数値の挙動を検討し、原因の特定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度に所属変更があり、教育業務が加わったため実施計画に遅れが生じた。 現在教育業務を考慮した研究進捗計画に変更し、実施期間の延長を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
内殻励起状態を模した試行関数でのDMC計算の不安定性の原因究明を行う。想定される各原因についてその影響の検討・確認を行い、安定した計算を行うために必要な条件を明らかにする。 スピン-軌道相互作用項の期待値は全エネルギーと比較して非常に小さいため、スピン-軌道相互作用を含まない計算の段階から計算結果のエラーバーを十分小さくする必要があるため、本課題の期間ではスピン-軌道相互作用項を含まない計算の安定化を目標とする。 これと並行して、計算の安定性には現状大きな問題の見られない近似IORA QMC法については追加の計算を進め、独立に論文化することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究実施内容の計画からの遅延に伴い、平成27年度に行う予定であった研究段階に対応した予算が未執行となったため。課題期間の延長を行ったので、研究計画変更に合わせ、延長期間内で利用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に学会発表および、論文発表のために使用する。
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