2013 Fiscal Year Research-status Report
アニソトロピック分子ゲルを利用した巨大円偏光フィルムの開発とその応用
Project/Area Number |
25810119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
神徳 啓邦 熊本大学, 自然科学研究科, 研究員 (60625614)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 円偏光 / 自己組織化 / ポリマーフィルム / キラル反転 |
Research Abstract |
当該年度は計画1の「自己組織性色素の合成とライブラリ化」と、計画2の「ポリマー複合アニソトロピック分子ゲルの調製と評価」についての取り組みを行った。計画1については当初の予定通り蛍光色素であるピレン、アントラセン、ポルフィリンに自己組織化ツールを導入し合成物を得た。その際、アントラセン誘導体に関しては、研究協力機関であるボルドー第一大学(フランス)からサンプルの提供をうけた。合成物の特性に関しては、吸収、発光、円二色性スペクトル等の基礎評価をおこない、国内学会において報告した。 計画2については、ポリマーとしてポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、エチレン-酢酸共重合体の3種類を選択し、各種自己組織性色素を封入したポリマーフィルムの作製をおこなった。作製したポリマーフィルムの評価は吸収、発光、円二色性スペクトル評価をおこなった。また、ポリマーフィルム中での自己組織性色素の集積構造を確認するため、積水化学工業株式会社にて透過型電子顕微鏡の依頼測定をおこなった。ポリマーフィルムの評価については、論文、学会において報告をおこなった。 ポリマーフィルムの評価において、ピレン誘導体を封入したポリマーフィルムが、熱処理によってキラル反転を引き起こすことを見出した。固体状態での熱によるキラル反転現象は珍しく、単一分子で逆の円偏光特性を発現させることが可能であることを意味しており、学術的な興味のみでなく、応用展開するための大きなアドバンテージになることが期待される。キラル反転現象については、現在論文執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予想していなかった単一分子でのキラル反転現象見出すことが出来たため。また、当初予定していた自己組織性色素の合成とライブラリ化については、計8種の色素を合成した。吸収波長域を300~550 nm、発光波長域を400~700nmと幅広い領域での波長ライブラリ化に成功し、当初の目的を十分に達成することが出来た。ポリマーフィルム中でのアニソトロピック分子ゲルの集積、配向のメカニズムについて十分なデータを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①キラル反転のメカニズムの解明、②円偏光発光現象の測定、③技術の幅を広げるため他の色素への適用を主としておこなう。①メカニズムの解明に関しては自己組織性脂質とポリマーの熱量分析によって検討を進める。熱量分析の際に、ポリマーフィルム中の自己組織性脂質量が非常に少ないため、十分な感度でのデータが得られない可能性がある。その際には高濃度でのサンプルを調製し、低濃度の際との光学特性が同様であることを確認した後に測定を行う。②円偏光発光に関しては、他研究機関の有するCPL発光分析装置の利用を検討している。③他の色素の候補としては申請書に記載し、すでに合成済みの色素をもとに検討予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は当初の予想していなかったキラル反転現象が確認されたため、その基礎調査を主におこなった。そのため、透過型電子顕微鏡観察や円偏光発光観察などの高価な消耗品や外部への出張が必要な測定装置は使用していない。また、自己組織性色素の合成においては初期評価のための少量合成のみをおこなったため、所属研究室で保有しているものを用いた。上記の理由により、本年度の使用額が当初の予定よりも少額となり、次年度使用額が生じた。 本年度は、フィルムとして評価するために自己組織性色素の大量合成をおこなう。そのためポルフィリン、ピレン誘導体などの高価な色素の購入が必要となる。また、円偏光発光測定のための外部機関への機器使用料の支払いや出張旅費が必要となる。成果公表についても、国内外での学会発表や論文発表を積極的に行う予定であり、そのための出張旅費や別刷り代が必要になる。
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