2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25810143
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
須田 理行 分子科学研究所, 協奏分子ステム研究センター, 助教 (80585159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己組織化単分子膜 / 有機電荷移動錯体 / モット転移 / 電界効果トランジスタ |
Research Abstract |
本研究は、BEDT-TTF (Bis(ethylenedithia)tetrathiafulvalene)誘導体をドナー分子とした電荷移動錯体の自己組織化単分子膜を作製することで、単分子膜モット絶縁体の構築し、これをチャネル層とした電界効果トランジスタ(FET)構造を作製することで、モット転移型の単分子膜FETを実現し、モット絶縁体から金属(または超伝導体)への相転移現象の観測並びにその機構の解明を目的とするものである。本年度は、BEDT-TTF誘導体の合成および、これを用いた自己組織化単分子膜の作成と評価を行った。実際のデバイスは、Si++/SiO2基板上に金電極を蒸着した後、基板を合成したBEDT-TTF誘導体及びアクセプター分子としてのTCNQ(Tetracyanoquinodimethane)の混合溶液に浸漬することで作製した。反射吸収型赤外分光(IRAS法)を用いた評価により、得られた単分子膜中ではBEDT-TTF誘導体とTCNQがそれぞれドナー及びアクセプターとして電荷移動錯体を形成し、バルクの(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶と同等の電荷移動度が見積もられた。この結果は、得られたデバイスの伝導度を2端子抵抗測定により評価したところ、チャネル長200 μm以内の領域でチャネル長の増加に対し線型の抵抗上昇が得られた。このことは、~200 μmに及ぶ広範囲なシングルドメイン単分子膜の形成を示唆する結果である。また、予備的な実験ではあるが、ゲート電圧の印加による電界効果も既に観測されており、今後はこの電界効果におけるキャリア挙動の詳細について研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、BEDT-TTF誘導体の合成とこれをドナー分子とした電荷移動錯体の自己組織化単分子膜を作製を当初の目的としていた。実際に本年度は、目的とするBEDT-TTF誘導体の合成を完了し、TCNQをアクセプターとして用いることで電荷移動錯体の自己組織化単分子膜を作成することに成功した。電荷移動錯体単分子膜の形成過程や膜構造・電子構造に関しては、AFMやIRAS法用いて詳細な評価も進んでいる。特に、~200 μmに及ぶ広範囲なシングルドメイン単分子膜の形成が示唆されたことは大きな成果である。次年度以降に予定している電界誘起モット転移の観測にはホール効果測定や赤外分光の適用が必須であり、これらの実験を推進する準備は十分に整ったと判断できる。従って、全体として研究の進捗状況は順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた単分子膜試料に対し、4端子法によりゲート電圧を制御しながら電界効果による抵抗値の変化を把握してゆく。更に、ホール効果測定を組み合わせ、試料の電気伝導型、キャリア数やその振る舞いに関する情報を得る。仮に、電界効果によりモット転移が誘起されると仮定するならば、そのキャリア密度や挙動は通常の電界誘起キャリアのそれと著しく異なるはずであり、ホール効果測定により転移挙動の詳細を追求できると考えられる。また、相転移挙動の追求に加え、新規分子デバイスとしての展開も視野に入れ、ON/OFF比やキャリア移動度など、基本的なFETデバイス性能の評価も同時に行う。こうした応用面の研究とは別に、FET動作のやモット転移の基礎的理解など、単分子膜FETならではの基礎的研究も並行して行う。特に、単分子膜FETでは、これまでブラックボックスであった界面におかる電子の振る舞いを直接観測できる可能性があるため、赤外領域における光学伝導度の観測や空間マッピングによる可視化なども視野に入れる。以上の結果について、学術誌の投稿を視野に出来るだけ早い時期に結果を統一的にまとめる予定である。
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