2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
葛西 誠 東京理科大学, 理工学部, 助教 (20579792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 交通流 / 交通容量 / 単路部ボトルネック / 臨界現象 / 階層ベイズ |
Research Abstract |
高速道路単路部ではサグ等に交通容量の小さい断面が生じることがあり、これをボトルネック現象と呼んでいる。既往研究では1対の前後車両ペアの挙動すなわち車両追従挙動をモデル化の単位とするため、サグ部の交通流を弱くしかし大域的に支配する道路線形の影響を適切に抽出していたかは検討の余地があった。本課題は、一定の長さの車列をモデル化の単位とすることで、道路線形が交通流に及ぼす影響を抽出するのみならず、集団内相互作用のもたらす臨界現象としてみなせる可能性を指摘する。臨界現象の1種と捉えることが根本的な容量向上策立案に繋がると期待される。 上述の目的は、ドライビングシミュレータ(以下DS)を活用し、同一被験者による繰り返し追従試験(追従積重ね試験と呼ばれる)によってノイズのない渋滞直前の交通流を再現したデータを取得したことにより担保される。次いで、車列のダイナミックスを表現する「車頭時間交換相互作用モデル」を構築した。この狙いは、一種の臨界現象として渋滞発生時の状況を解釈できる可能性を示すことにある。ここでの交換相互作用は、いわば隣接車両間で共有する「雰囲気」とみなせる。渋滞発生時に特徴的とされる車頭時間の擾乱およびその増幅波の発生は、サグのような道路線形でのみ生じ得る特有の「渋滞流になりそうな雰囲気」と解釈することを狙っている。すなわち、交通流と道路線形の関係を、雰囲気を介在変数として説明を試みるのである。 当該年度は、上記の車頭時間交換相互作用モデルのプロトタイプ構築と、実際にDSにて入手した追従積重ね試験データによるモデルパラメータの推定方法検討に主眼が置かれた。吟味の必要は残っているが概ねモデルの考え方を支持する結果が得られている。次年度課題と位置付ける「雰囲気」改善方法の検討のために、多種類の道路線形にてDS実験を行ない、さらにいくつかの雰囲気改善策を試行し評価する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根幹をなす「車頭時間交換相互作用モデル」は、当該科研費課題の応募前から予備検討を行っていたこともあり、国際学会にて発表するなど基盤は構築されている。 科研費による補助を得てからは、ドライビングシミュレータ(以下DS)によって、このユニークなモデルの妥当性をそのまま検証用できる貴重なデータが入手できている。ほぼ計画当初の意図通り、渋滞発生直前の交通流データが時空間的にほぼ均一の精度で多数取得されたことが最大の成果である。 モデル推定の方法としては、階層ベイズ推定の適用、具体的推定方法としての1つとしてのマルコフ連鎖モンテカルロ法の適用に一定の目途がついている。モデルパラメータ推定は現在進行中であるため、この点やや進捗は遅れ気味ではあるが、「雰囲気」としての車頭時間交換相互作用の強さと縦断線形を対応付けすることの可能性は見えていると判断される。 一方で、雰囲気向上策、すなわち容量向上策を具体に検証することは今後の検討課題として残っているものの、いくつかの予備実験によってDS上に再現すべき状況が絞られつつある。 以上より、総じて「概ね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は以下の方策をとる。 第1に車頭時間交換相互作用モデルにおける「交換相互作用」の強さを具体に縦断線形と対応付けすることが推進されるべき課題である。これはさらに2つのサブ課題に分割でき、平成25年度構築したプロトタイプモデル以外の可能性を探ること、すなわち交換相互作用としてありうべき形状をいくつか考えモデル適合性を判断することである。いま1つは、縦断線形と交通容量との関係を定式化することが大きな目標となるので、DS実験における道路線形の種類の補充と追加実験が必要であることであり、目下企画中である。 第2として、容量が小さい断面における(ボトルネックとして顕在化している断面における)容量向上策の考案であり、いわば、渋滞発生直前においても渋滞であると感じさせない雰囲気の醸成方法の検討である。実路における渋滞発生直後の車載カメラによる映像は得られているので、これを参考にいくつかDS上で再現するべきシナリオを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
詳細実験計画策定に伴ない、当初想定計画から実験規模(ドライビングシミュレータ実験の被験者、拘束時間等)が調整されたことが当該助成金が生じた理由である。 主に研究成果発表の旅費、ドライビングシミュレータ実験の謝金として支出する計画である。
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Research Products
(1 results)