2013 Fiscal Year Research-status Report
森林域からの溶存有機炭素移動モデルの構築と他流域域への適用検討
Project/Area Number |
25820254
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Toyota National College of Technology |
Principal Investigator |
松本 嘉孝 豊田工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (40413786)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ノンポイント汚染 / 物質動態 / 水文学 / DOC / 分布型物質移動モデル / 山地流域 |
Research Abstract |
流域水質管理に欠かせない溶存態有機炭素(DOC)の年間移動量を算定する重要性は高いが,現状としては国内の限られた地域のみでしか継続な知見が得られていない。 そこで,本研究は小流域レベルにおいて,森林域から流出するDOC量の算出モデルを構築すると共に,モデルの汎用性を確認するために他流域での実測結果と比較,検証することを目的としている。 研究目的を達成するため,3段階のステップ,1)水文と土壌のサブモデルの統合により,汎用性を有した新たなモデルを構築,2)モデル計算結果と実測値との比較により,モデルの信頼性の検証,3)モデルの他流域への適用検討を考えている。平成25年度では,主に1)を主としながらも2),3)についても準備を進めた。 1)については,水文モデルの構築を8割程度完了することができた。また,そのモデルを用いて,土壌サブモデルと統合し,結果を得ることができた。2)については,水文と土壌サブモデルと統合した結果が,従来よりも高い精度でDOC濃度を算定することができた。ただし,まだ完全な統合モデルを作成しているわけではないので,土壌モデルに水文モデルの時間ステップを組み込んだモデルへとしたい。3)については,愛知県豊田市足助町の,人為的汚染のない山地に新たな調査流域を設置した。そこで,気象観測と水文観測,連続水質観測を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)水文と土壌のサブモデルの統合は,水文モデルの構築および検証が今年度の目標であった。水文モデルには当初のkinematic wave法ではなく,TOPMODEL法を採用した。TOPMODEL法の使用は初めてであったが,水文モデルが専門の山梨大学の市川准教授の指導のもと,モデルの形を作ることができた。その結果はまだ,誤差やモデル内部の検討の必要はあるが,おおむね良好な結果が得られている。山梨大学の研究者とは,2週間に1回程度のOn Line Meetingを行っており,研究の進捗は問題ない。 2)モデル計算結果と実測値との比較については,調査結果の見直しとモデル検証可能データセットに整理が今年度の達成目標であった。調査結果の見直しとデータセット化は終わり,モデルの信頼性の検証についてまで行った。ここでは,1)で作成した水文モデル結果と既に作成している土壌サブモデルとを統合した。その結果,実測値と比べ,大きな誤差はなく,良好な結果が得られた。しかし,両モデルはタイムステップを合わせていないため,来年度以降は改良が必要である。 3)モデルの他流域への適用検討については,矢作川流域において新たな調査地の設置を行うことが到達目標であった。今年度は,観測機器の設置,装置の初期不良の検討,データの質的検討および水文データの解析を行い降雨時における調査体制を確立し本調査を開始することができたため,今年度の目標は達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度については,1)のモデル構築は,サブモデルの統合による新たなモデルの構築および高度化,2)についてはモデル計算結果と実測値の比較,3)のモデルの他流域への検討については,本格調査の開始とする。 1)については,前年度構築した水文モデルと,土壌からのDOC発生及び移動モデルとを統合し,新たなDOC移動モデルを構築する。これにより,パラメータ数を土壌タイプ,地形勾配,植生状況と少なくすることができ,モデル一般化への道筋も立てることができる。 2)については,瑞牆山の長期データを使用し,信頼性の高い調査データによるモデルの検証を実施する。ここでは,モデル化可能な空間スケールの把握を検証するため,比較的均質な流域条件である数haから,それらが複合した数km2のレベルへと順に展開,検討する。 3)については,調査によるデータ取得を主とし,矢作川流域の年間溶存炭素移動量の実測結果算出を目的とする。1ヶ月に2回程度の定期調査を行うと共に,降雨が発生する前には調査地へ赴き降雨時試料の採取を行う。加えて,矢作川流域の水文流出モデルの適用性についても作業を開始する。 研究発表としては,モデルを組み合わせ,検証を行ったことについて国内外において論文発表および成果発表を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)