2013 Fiscal Year Research-status Report
熱水鉱床開発に向けた超音波流速計による懸濁物質濃度および粒径分布の非接触3D計測
Project/Area Number |
25820423
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
新井 励 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60508381)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海中音響 / ADCP / 熱水鉱床 / 海洋計測 |
Research Abstract |
日本周辺海域には海洋資源となりうる未発見の海底熱水鉱床の存在が予想される。また、既知の熱水鉱床周辺海域には熱水由来の特異かつ貴重な化学合成生態系が存在し、今後、これら熱水鉱床の開発を実施するに際し、周辺生態系に対し環境影響評価をすることが不可欠である。そのため、採鉱時にどの程度の濃度の重金属等を含む懸濁物質が発生・拡散・堆積し、周辺海域の生態系に影響を及ぼすか、懸濁物質を計測することで把握する必要がある。しかしながら現在用いられている濁度計は点計測のみであり、懸濁物質の特性や拡散状況を空間的に把握するためのデータ量としては圧倒的に不足しているのが現状である。 上記のような背景を受け、本申請課題の目的は、超音波流速計(ADCP)による熱水鉱床の探査および開発時に発生する懸濁物質濃度および粒径分布の非接触三次元計測である。この目的を達成するうえで研究期間は平成25年度から平成27年度の3ヵ年とし、平成25年度は懸濁物質の粒径分布と海底による音波の反射の影響を考慮した、音響伝播アルゴリズムを構築を目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目的は懸濁物質の粒径分布と音波の海底反射の影響を考慮した音響伝播モデルの構築である。 懸濁物質の粒子径が音響散乱にどのように影響を与えるかを検証する実験を実施した。具体的には円柱アクリル製の水槽を作成し下方横穴から取水し上方に供給することで鉛直循環式の水槽を作成し、その水槽内に各種粒子径のビーズを、粒径分布がガウス分布に従うように投入し(海域の粒径分布はガウス分布に従う)、トランスポンダー(現有機器、JapanProbe社製CN-10)により粒子の散乱強度を計測する実験を実施した。さらに、実海域の水を採水し、その粒径分布を分析・把握した後に水槽内に投入し、その散乱強度もトランスポンダーで計測した。粒径分布はガウス関数により表現できるため、その平均粒径と分散値により表現することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はADCPに備わった4つのトランスデューサーの受信-出力機構を個々にモデル化による、水平方向の懸濁物質濃度分布の計測の実現を図る。本研究で対象とするADCPは国内外で最も広く用いられている現有のADCP(RDI社製workhouse-sentinel)とする。ADCPの内部基盤は電源電圧の変化(電池の消耗具合)や機器内温度により基盤自体の抵抗(インピーダンス)が変化する。そのためADCPのトランスデューサーに供給される電力量も状況により変化し、トランスデューサーにおける音波の発信強度も変化する。さらに、ADCPには4つのトランスデューサーがあり、個々に送受信感度がことなる。これらの問題に対処するため、まず、基盤のインピーダンスと回路内温度、供給電力量を計測し、トランスデューサーに供給される電力量を算出するモデルを構築する。さらに各トランスデューサーの受信感度を、トランスポンダーにより計測し、トランスデューサーに供給される電力量のモデルと統合することでADCP本体の数値モデルを構築する。これにより各トランスデューサーで計測した受信強度から独立して懸濁物質濃度を算出できるため、前年度に開発した音響伝播モデルと統合することで水平方向の懸濁物質濃度分布の計測が可能となる。また、本モデルの妥当性の検証のため、実海域においてADCPによる受信強度を計測するとともに、計測対象海域の各水深の懸濁物質濃度と粒径分布を採水分析から定量する。得られた懸濁物質濃度と粒径分布をADCPの数値モデルに組み込み計算した受信強度とADCPで実際に計測された受信強度を比較することでモデルの妥当性を検証する。なお、実証実験海域としては本学が研究フィールドとしている大阪湾堺浜を想定している。
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Research Products
(2 results)