2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25820449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片岡 隆浩 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (40509832)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラドン / 一過性脳虚血 / 抗酸化機能 / 神経細胞 / スナネズミ / 海馬 |
Research Abstract |
本研究課題では,低線量放射線による健康不安を払拭するための提案として,ネガティブなイメージの少ないラドン温泉効果と生活に密着したビタミンCや生活習慣病などと関連付けることにより,公衆の放射線の健康影響に対するイメージの改善のための一助とすることである。平成25年度では,ラドン吸入によるスナネズミにおける一過性脳虚血に伴う細胞障害の抑制効果の有無について検討した。すなわち,8週齢・雌のスナネズミ(MGS/Sea)に2000Bq/m3ラドン(222Rn)または疑似(Sham;対照)の吸入を各々24時間させた。吸入直後にペントバルビタール(50mg/kg体重)を腹腔内投与し,両側の総頸動脈をクリップで10分間血流を遮断した。その4日後に安楽死させ脳を摘出し試料に供した。その結果,1) Sham(擬似)手術またはラドン吸入のみは,海馬CA1の細胞に影響はなかった。2) ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色・クリューバー・バレラ(KB)染色いずれの結果も一過性脳虚血によりCA1の損傷細胞数は対照に比べ有意に増加したことから,一過性脳虚血モデルの作製が確認できた。3)HE染色により,一過性脳虚血をした場合,CA1の損傷細胞数は事前にラドンを吸入した方が吸入しないのに比べ有意に減少することがわかった。4) KB染色で同様の結果が得られたことから,ラドン吸入はCA1の神経細胞の損傷を抑制することもわかった。以上の所見などにより,ラドン吸入はスナネズミの一過性脳虚血に伴う海馬CA1の細胞損傷を抑制することを示すことができた。 本研究結果は,2件の関連学会(文部科学省復興対策特別人材育成事業「被ばくの瞬間から生涯」を見渡す放射線生物・医学の学際教育,日本原子力学会2014年春の年会で発表し,さらに,英語論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本実験では一過性脳虚血モデル作製に適したスナネズミを材料としたが,本系統のスナネズミは生産中止になったため,岡山大学自然生命科学研究支援センター動物資源部門にて自家繁殖により動物の供給を行っている。不妊率が高く出産数が少ないため当初から動物の供給数を少なめに想定していたが,予想以上の動物数が得られたことが当初の計画以上に進展している主な理由である。また,ラドン吸入はマウスの抗酸化機能を亢進させることは明らかになっていたが動物種の異なるスナネズミでの報告はなかった。しかし,スナネズミにおいても同様にラドン吸入により抗酸化機能が亢進したことも確認できた。また,文献調査により,ラドン吸入により抗酸化機能が亢進すれば一過性脳虚血による障害が抑制されることを想定していたが,本研究の結果,ラドン吸入により一過性脳虚血による障害が抑制されることも明らかとなり,想定通りの結果が得られたことも当初の計画以上に進展している理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度での研究成果から,ラドン吸入はスナネズミの脳中の抗酸化機能を亢進させることがわかった。これはビタミンCなどの抗酸化物質と同様の効果であり,その抗酸化作用で一過性脳虚血による障害を抑制することが明らかとなった。平成26年度では,ラドン吸入をした場合とビタミンC投与した場合の総抗酸化機能を比較検討とビタミンC投与による一過性脳虚血による障害の抑制効果の濃度依存性を検討する。これより,ラドン吸入した場合の抗酸化能を比較検討することができる。さらに,なぜラドン吸入が抗酸化機能を亢進するのかについて詳細に検討する。 また,本研究の目的が「低線量放射線による健康不安を払拭するための提案」であることから,本研究の成果を広くアピールする必要があるため,国内外の学会発表や論文投稿を通して研究成果を報告するとともに,低線量放射線の健康効果について,学術雑誌に解説や総説を積極的に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプルの量が想定以上に少なかったことから,想定していたタンパクや酵素の測定ができなかったものがあり,その分,予算の執行ができなかった。 サンプルの確保に努め,昨年度測定できなかったタンパクや酵素の分析を実施する。
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