2015 Fiscal Year Annual Research Report
種間比較に基づく大型ゲンゴロウ類の生態の解明と保全
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25830152
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / 水生甲虫 / 標識再捕獲 / 生活史 / 集団遺伝構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、個体数を減らしているゲンゴロウ(ナミ)とクロゲンゴロウ(クロ)がいる一方で、コガタノゲンゴロウ(コガタノ)が、近年増加していることに着目し、これらの基礎生態と減少(増加)要因を解明することである。本研究では、1)生活史・行動、2)増殖能力、3)移動分散能力および4)集団遺伝構造 を上記の3種間で比較した。 【1】行動観察を行った結果、コガタノが他2種に比べて最も活発に泳ぎ、餌も一番早く発見すること、摂食量が多いことが明らかとなった。また、H27年度にデータの追加を行い、20、23、25、28、30度で飼育した結果、発育ゼロ点はナミとクロが8度前後、コガタノが17度となった。羽化率を温度間で比較したところ、ナミは差なし、クロは30度で低下、コガタノは温度上昇と共に上昇した。 【2】ナミは4月~7月、クロは4月~6月、コガタノは6~8月に産卵が見られたが、1シーズンあたりの1メスの総産卵数に種間差はなかった。 【3】4~10月に強制上陸させて飛翔試行回数を調査したところ、ナミはほとんど飛翔しなかったが、クロは4月、コガタノは4月と10月によく飛翔した。また、フライトミルで飛翔距離を測定すると、コガタノが他2種よりも高い値を示した。標識再捕獲調査の結果から野外では、コガタノが他2種に比べて再捕獲される割合が低かったことから、頻繁に移動を繰り返していると推察された。 【4】mtDNAのCOIと、H27年度にCOII領域の配列決定と系統樹の作成を行った。ナミでは地理的な分化が最も顕著で、クロではナミと比べて地理的分化が小さかった。一方、コガタノは地理的な分化がなく、本州~南西諸島で単一のクレードを形成し、すべての集団が入れ子状に配置されることが明らかとなった。
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