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2014 Fiscal Year Research-status Report

グリーンヒドラ―クロレラ共生システムにおける分子相互作用・ゲノム間相互作用の解析

Research Project

Project/Area Number 25840132
Research InstitutionOkinawa Institute of Science and Technology Graduate University

Principal Investigator

濱田 麻友子  沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (40378584)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords進化 / ゲノム / 共生 / ヒドラ / クロレラ
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、クロレラを体内に共生させているグリーンヒドラHydra viridissimaを用いて、動物―藻類共生システムにおける相互作用の実態を明らかにすることを目指している。前年度までに、グリーンヒドラのマイクロアレイ解析により、本来の共生クロレラとの特異的な共生が成立している時のみに発現変化を示すヒドラ遺伝子を約10遺伝子同定した。この遺伝子群は、窒素同化に重要な役割を果たすグルタミン合成酵素や、リン酸の細胞内恒常性の維持に重要であるナトリウム依存性リン酸トランスポーター等を含んでいた。また、これらのヒドラ遺伝子はクロレラの光合成産物によって発現上昇することが示唆された。窒素、リンは植物にとって必須な栄養素であり、これらの結果はヒドラ―クロレラ間の協調的な相互作用によって、栄養供給が遺伝子レベルで調節されていることを示唆していると考えられる。以上のことから、クロレラが光合成により糖類を分泌してクロレラに与え、ヒドラはこれに応答して遺伝子発現を変化させ、グルタミンやリンを栄養源としてクロレラに与えるという相互作用のモデルを立てた。
平成26年度は、以上のような依存関係が成立している時、共生藻のゲノムにはどのような特徴があるのかを明らかにするため、共生クロレラChlorella sp. A99のゲノム解読を行った。アセンブルの結果、N50 = 1.7Mの非常に長いScaffoldを得ることができた。ゲノムサイズは約60Mb、GC含量は約70%であった。 以上のデータを用いて共生クロレラゲノムにおける窒素代謝系遺伝子の有無を調べたところ、興味深いことに一般の植物では窒素同化に必須とされている硝酸トランスポーターなどの硝酸同化に関わる遺伝子が欠失していた。このことから、クロレラは窒素源としてヒドラから供給されるアミノ酸などに依存し、ゲノムからは硝酸同化システムが退化している可能性が考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究では(1)グリーンヒドラとクロレラのゲノム解析を行い、この共生システムの進化の過程においてゲノム中でおこった遺伝子の変化を明らかにすること、(2)共生活動の中でも特にクロレラの光合成に関わるヒドラ遺伝子を同定するために、クロレラの有無、明暗条件、光合成阻害などで発現変化するヒドラ遺伝子のトランスクリプトーム解析を行うこと、(3)以上の遺伝子について、その生体内での発現・機能を明らかにすることにより、ヒドラ―クロレラ間相互作用の分子メカニズムを具体的に理解することを計画している。
これまでに、マイクロアレイを用いたグリーンヒドラ遺伝子のトランスクリプトーム解析によって特異的な共生関係が成立している状態において発現変化を示す遺伝子群を得ることができ、これらがクロレラの光合成産物によって発現調節されている可能性を示すことができた。また、発現解析を行った結果、これらの遺伝子の多くがクロレラとの共生が見られる内胚葉細胞に発現していることがわかった。以上の結果から、ヒドラークロレラ間での遺伝子レベルの相互的調節関係が明らかになり、分子的相互作用の実態に迫ることができたと言える。さらに、共生クロレラのゲノムシークエンスを完了させ、共生クロレラの窒素代謝経路に注目したところ、硝酸同化経路に関わる一部の遺伝子が失われている可能性を示すことができた。
当初の計画とは平成25年度と26年度ですべての実験を終える予定であったが、共生クロレラのmRNA-seqと遺伝子モデルの作成、ヒドラ候補遺伝子の機能解析が未だ完了しておらず、これら2つの計画については次年度に持ち越すこととなったため、本研究計画の達成度は「やや遅れている」とする。

Strategy for Future Research Activity

共生クロレラのmRNA-seqによる遺伝子モデルの作成と、特異的な共生関係が成立している時に発現変化を示すグリーンヒドラ遺伝子の機能解析を終わらせ、本研究計画をすべて完了させ、論文としてまとめることを目指す。
共生クロレラのmRNA-seqに関しては、これまでに明条件下と暗条件下でサンプリングを行い、mRNA-seqに十分量のRNAを得ている。今後はIllumina Hiseqを用いたシークエンシングを行い、遺伝子モデルの作成を完了させる予定である。ゲノムだけでなく遺伝子モデルを得ることにより、遺伝子の数やゲノム上における位置関係が明確となる。これを利用して、特に共生クロレラゲノムにおける硝酸同化遺伝子の有無や他の窒素関連遺伝子の構造に注目しようと考えている。
マイクロアレイ解析によって同定された候補遺伝子の機能解析に関しては、siRNAによるノックダウン実験のためのコンストラクト作りはすでに終えている。しかし、これまでグリーンヒドラから得られる受精卵の数が少ないこと、コンストラクトのインジェクションが難しいことなどから、未だ導入個体を得るに至っていない。今度、受精卵へのインジェクションの他、ヒドラへのエレクトロポレーションによる導入も試みようと考えている。
以上2点の計画を終えることで、本課題はすべて完了することになる。以上の研究から、動物―藻類共生システムにおける分子的相互作用とゲノム相互作用という2つの側面を、栄養のやりとり、特に窒素代謝から具体的に理解することができると考えている。

Causes of Carryover

本研究ではmRNA-seqと候補遺伝子の機能解析がまだ完了していないため、それにかかる費用を次年度に持ち越すこととなった。平成25年10月まで共同研究先のドイツ・キール大学に滞在し、発現・機能解析などの実験を先に行ったため、その間はシークエンスに関する仕事をすることができなかった。その後、所属先である沖縄科学技術大学院大学で共生クロレラのゲノムシークエンシングを行い、ゲノム解読は完了したが、十分量のサンプルを培養するのに時間がかかるためmRNA-seqは未だ完了していない。そのため、シークエンス用試薬代の一部を翌年度分として持ち越すこととなった。また、候補遺伝子の機能解析において、siRNA発現用コンストラクトのヒドラ卵へのインジェクションや受精卵の入手が困難であることから、未だ導入個体を得るに至っていない。そのため、このノックダウン個体の解析に用いる分子生物学実験用試薬代を次年度に持ち越すこととした。

Expenditure Plan for Carryover Budget

本研究の次年度使用額は、未だ完了していないmRNA-seqによる遺伝子モデルの作成と、候補遺伝子の機能解析に使用する予定である。Illumina mRNAサンプル調整キット(約50万円)、Miseqシークエンス用キット1ラン分(Miseq Reagent Kit v3 600 cycles 約30万円)に加え、一般試薬・消耗品として、分子生物学実験用の試薬、実験器具用のガラス製品、紙・プラスチック製品、データ保存用のディスクの購入を計画している(約50万円)。また、国内旅費として年1回程度の国内学会参加のための費用と、海外旅費として年1回の共同研究者との打ち合わせ・実験のためのドイツ渡航費用(約20万円)を計画している。

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] How do environmental factors influence life cycles and development? An experimental framework for early-diverging metazoans.2014

    • Author(s)
      Thomas C. G. Bosch, Maja Adamska, Rene Augustin, Tomislav Domazet-Loso,Sylvain Foret, Sebastian Fraune, Noriko Funayama, Juris Grasis, Mayuko Hamada, Masayuki Hatta, Bert Hobmayer, Kotoe Kawai, Alexander Klimovich, Michael Manuel, Chuya Shinzato, Uli Technau, Seungshic Yum and David J. Miller.
    • Journal Title

      Bioessays

      Volume: 36 Pages: 1185-1194

    • DOI

      10.1002/bies.201400065

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] グリーンヒドラ―クロレラ共生系における分子相互作用とゲノム進化2015

    • Author(s)
      濱田麻友子、新里宙也、Ulrich Kurn、佐藤矩行、Thomas C.G. Bosch
    • Organizer
      日本藻類学会第39回福岡大会
    • Place of Presentation
      九州大学箱崎キャンパス
    • Year and Date
      2015-03-20 – 2015-03-22
  • [Presentation] ゲノムから見た刺胞動物‐藻類共生システム2014

    • Author(s)
      濱田麻友子
    • Organizer
      平成26年度日本動物学会中部支部大会シンポジウム「海産無脊椎動物研究の最前線」
    • Place of Presentation
      のと勤労者プラザ
    • Year and Date
      2014-11-22 – 2014-11-24
    • Invited
  • [Presentation] グリーンヒドラを用いた共生システムにおける分子的相互作用とゲノム進化の解析2014

    • Author(s)
      濱田麻友子,佐藤 矩行,Thomas C. G. Bosch
    • Organizer
      第85回日本動物学会仙台大会
    • Place of Presentation
      東北大学川内北キャンパス
    • Year and Date
      2014-09-10 – 2014-09-14

URL: 

Published: 2016-06-01  

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