2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25840160
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系, 特任助教 (60610962)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 社会性 / カースト比率 / 二生吸虫 / 寄生虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
巻貝の体内で生活する二生吸虫は、巻貝の体内で無性的に増殖して100個体以上からなる大きなコロニーを形成して生活している。興味深いことに、一部の二生吸虫においては、繁殖と兵隊のカースト分化がコロニー内で生じていることが報告されている。繁殖個体と兵隊個体のカースト比率は生息環境と深い関わりがある可能性がある。何故なら、敵の多い環境では兵隊個体の需要が、そして資源の豊富な環境では繁殖個体の需要が高まる事が予想されるからである。本研究では、二生吸虫にみられる2つのカーストの比率を様々な生息環境下で調査することで、二生吸虫のカースト比率の決定機構を明らかにすることを目的とした。 まず始めに、実験室内で二生吸虫の生息環境を変化させ、それぞれの環境でのカースト比率の変化を観察するために、二生吸虫の体外培養の方法を検討した。昨年度は最長で約2カ月間の培養に成功したが、本年度は、温度条件や培養液の組成を変えることで、最長で約3カ月間の培養に成功した。 自然環境下では、二生吸虫は敵との遭遇頻度が高い程、多くの兵隊個体を生産すると予想される。今年度の調査で、研究対象としている二生吸虫が宿主の巻貝ホソウミニナだけでなく、その近縁種のウミニナにも感染していることを遺伝子解析により明らかにした。ホソウミニナとウミニナでは感染する二生吸虫の種数と感染率が共に大きく異なるので、この2種に感染する二生吸虫のカースト比率を比較することで、仮説の通りに敵との遭遇頻度がカースト比率の決定に重要な役割を果たしているのかを検討することができると考える。今後は、このような野外研究システムを活用することで、カースト比率の決定要因の解明に迫りたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、二生吸虫の体外培養システムの構築と飼育実験系の確率を目指した。飼育温度の検討と培養液の組成を調整することで、最長で約3カ月の培養に成功した。しかしながら、昨年と同様に、この培養条件下においても二生吸虫の繁殖や成長を確認することは出来なかった。したがって、飼育実験系の確立には至っていないのが現状である。このような理由から、研究が当初の計画と比べてやや遅れていると判断した。しかし、野外調査においては、異なる宿主に同種の二生吸虫が感染していることを発見し、カースト比率と敵の侵入頻度の関連性の評価をするための優れた実験系を創出することができた。この点においては、当初の計画を上回る成果であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
二生吸虫の体外培養については、残念ながら繁殖や成長が見られていないため、当初予定していた様々な環境下での飼育実験が実行できていない。おそらく、二生吸虫の繁殖や成長に必須な物質が培養液中に欠けているのが原因であると考えられる。残念ながら、この物質の特定及びその後の飼育実験を残された期間内で行なうのは困難であると考えられる。そのため今後は、その打開策として、野外実験系でのデータ収集に力を入れて他種の二生吸虫との宿主を巡る競争が二生吸虫のカースト比率に与える影響を明らかにし、本研究の目的であるカースト比率の決定機構の理解を深めていきたい。
|
Research Products
(1 results)