2014 Fiscal Year Research-status Report
トビイロウンカのイネの圃場抵抗性に対する適応の遺伝解析
Project/Area Number |
25850037
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
小林 徹也 独立行政法人農業生物資源研究所, 加害・耐虫機構研究ユニット, 主任研究員 (90355321)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トビイロウンカ抵抗性 / 圃場抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ品種IR64が保有する圃場抵抗性の効果がトビイロウンカ系統間で異なるかを明らかにするため、以下の実験を行った。東南アジアにおいてIR64品種の普及する以前に日本に飛来したトビイロウンカ系統C89(1989年筑後市)と最近採集した系統K10(2010年合志市)の2つについて、圃場抵抗性品種IR64と通常の抵抗性品種IR26、感受性品種IR22の3品種の播種後2週間のイネ体に孵化幼虫を放飼し、羽化までの日数、発育ステージ構成の変化および羽化率を比較した。また、Development Index(Bird & Hodkinson, 2005)を求め、各品種に対する適応の程度を比較した。 トビイロウンカの羽化率は、どちらの系統もイネ品種間で差がなかった。一方、発育日数は、C89系統と圃場抵抗性品種IR64の組み合わせにおいてのみ一部の個体の発育の有意な遅延が認められた。K10系統は全体的に発育が遅かったが、発育速度に品種間差は認められなかった。要するに、圃場抵抗性IR64の普及前のトビイロウンカ集団はこの品種に対し適応度の低い個体が含まれていることが明らかになった。 それぞれのトビイロウンカ系統からIR64上での発育の速い集団、遅い集団のふたつを選抜した。それぞれの系統は交配に備えて継代飼育を行っている。 また、テスト用のDNAを抽出し、QTL解析のためのMultiplex PCRによるSNPs多型解析の検討を行った。本年度はライブラリの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IR64が持つ圃場抵抗性がトビイロウンカの発育に与える影響は、ウンカ系統によって異なることが明らかになった。IR64が普及する以前のウンカ系統に発育が遅い個体が含まれていることは、野外における加害性の選抜の過程を考えるとリーズナブルである。また、今回発育速度の異なる系統を樹立できたことから、交配実験とQTL解析を行う準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回選抜した系統の交配を行い、遺伝様式を明らかにする。F2世代について個体別にDNAを抽出し、SNPsマーカーを用いてQTL解析を行う。QTL解析の結果から、適応の遺伝的因子を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
SNPsを用いた多型解析のためにはDNA抽出、multiplex PCRによるマーカー領域の増幅、次世代シーケンス解析のためのライブラリ作成ののち、委託によるシーケンス解析が必要である。このうち、ライブラリの作成から先のステップについては最終年度に行う必要があるが、その準備に時間がかかり、2年目は試薬費等の支出が予定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次世代シーケンスライブラリの作成に必要な試薬費とシーケンスの委託に必要な経費として最終年度に使用する。また、交配系統の作成と維持に必要な補助員の賃金として使用する。
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