2013 Fiscal Year Research-status Report
酸素安定同位体比が明らかにする森林生態系における窒素流出入と内部窒素循環の関連性
Project/Area Number |
25850114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
尾坂 兼一 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (30455266)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒素 / 大気降下物 / 安定同位体 / 森林 / 流域 |
Research Abstract |
調査予定地であった油日森林流域において4回の降雨時調査を行い、採取したサンプルのNO3-濃度と酸素安定同位体比の測定をおこなった。その結果、林内雨として一降雨でもたらされたNO3-のうち、3-20%程度が全く森林生態系内の植生や微生物に吸収されることなく、直ちに流出していることが明らかになった。 土壌水は油日流域内の2斜面のそれぞれ上部に1地点(深さ10、30cm)、下部に2地点(深さ10、30cm)、テンションフリーライシメーターを設置して3週間に1度程度採取した。また林内雨は流域内の2地点で採取し、これらのサンプルはNO3-濃度と酸素安定同位体比の測定を行った。それぞれの地点で採水量とNO3-濃度を掛け合わせてNO3-移動量を計算したところ、2014年4月18日から2015年1月24日の期間に林内雨として本流域にもたらされたNO3-量は6.75 kgN/haであり、土壌深10、30cmを通過したNO3-はそれぞれ2.10 kgN/ha、3.07 kgN/haであった。また土壌深10、30cmを通過したNO3-のうちそれぞれ0.67 kgN/ha、1.41 kgN/haは大気降下物由来のNO3-であり、大気降下物として本森林流域にもたらされたNO3-のうち20%程度は0-30cmの表層土壌層を”素通り”して30cm以深へと流出していることが明らかになった。また、降雨時調査の結果から林内雨でもたらされたNO3-のうち3-20%が森林生態系内の植生や微生物に吸収されることなく流出していることを合わせて考えると、土壌深30cm以深へ流出したNO3-はほぼ森林生態系内の植生や微生物に吸収されることはないと考えられる。土壌は油日森林流域内の3斜面のそれぞれ上部と下部の深度0-10cm、20-30cmにおいて4回で採取し、これについては今後分析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成のためには降雨時の渓流水質調査、降水質調査、土壌水採取調査、土壌調査が必要不可欠であるが、そのすべての機器設置、実際の調査を開始することができた。また、目的の一つである、森林生態系における大気降下物により流入したNO3-の利用効率に関しても定量的な結果が得られ始めているので評価を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように平成25年度はおおむね順調に研究を進めることができた。そのため今後の研究推進方策は申請書の計画どおり降雨時の渓流水質調査、降水質調査、土壌水採取調査、土壌調査、解析を引き続き行う。平成26年度も調査を引き続き行うことで、ある程度まとまった期間のデータが得られるため、平成26年度は、森林生態系における大気降下物により流入したNO3-の利用効率の季節性などに関しても解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は土壌水採取装置の設置など諸々の機器設置のため、降雨時渓流水質調査のための自動採水器の設置が遅れた。そのため自動採水器のリース代が余ったため、これを次年度に回す。 平成26年度は降雨時渓流水調査を効率化するために自動採水器装置をリースする。繰越金はこのリース代に充てる。
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Research Products
(2 results)