2015 Fiscal Year Annual Research Report
内温性をもつ特殊なサメ類の行動生態とエネルギー収支
Project/Area Number |
25850138
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 行動生態 / 魚類 / 遊泳スピード / バイオロギング |
Outline of Annual Research Achievements |
オーストラリアの南部、ネプチューン島の周辺海域にて、ホホジロザメの生態調査を実施した。調査船の船尾からエサをまいてサメをおびき寄せ、サメが船に最も接近した瞬間を狙い、クランプで挟み込む方式で記録計のパッケージを背びれに取り付けた。記録計のパッケージには通常の記録計(深度、遊泳スピード、温度、加速度を測定する)の他、ビデオカメラが組み込んであり、サメの視点から水中映像を撮影するようになっていた。記録計のパッケージは2~3日後にタイマーで切り離され、海面に浮かび上がったところを、電波信号を頼りに探し出して回収した。このような方法で、計5個体のホホジロザメからデータを得ることができた。 データを解析したところ、ホホジロザメの驚くべき運動能力が明らかになった。ある個体は、時速7キロを維持して90分間、海面のすぐ下を泳ぎ続けており、これは今までに調べられたどんな魚よりも速い平均遊泳スピードの記録であった。また、ビデオカメラの映像から、ある個体は水中でオットセイを見つけて追いかけ、水面に追いつめて襲いかかっていたことがわかった。このときの記録計のデータを分析したところ、サメは一秒間に4往復という猛烈なスピードで尾びれを振っており、最高速度は時速30キロに達していたと推定された。この値も、今までに測定された魚類の瞬間最大スピードの中では最大値に近い。このように、内温性をもつホホジロザメの非常に高い運動能力と、水面に追い詰めてからオットセイに襲いかかる巧みな戦略の両方を示す貴重なデータを得ることができた。現在、このデータの解析を続けており、近いうちに論文にまとめ、「PNAS」「Current Biology」等のトップジャーナルに投稿したいと考えている。
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Research Products
(10 results)