2014 Fiscal Year Research-status Report
犬脊髄損傷症例に対する幹細胞・嗅神経鞘細胞同時自家移植による脊髄再生療法の検討
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25850212
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 大介 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (40508694)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 嗅粘膜 / 嗅神経鞘細胞 / 脊髄損傷 / 脊髄再生医療 / 脱分化脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は犬の自然発症した脊髄損傷症例へ鼻粘膜由来幹細胞ならびに嗅神経鞘細胞を同時移植し、脊髄機能回復に関する有用性を検討することであり、初年度(昨年度)に遂行できなかった1.犬の嗅粘膜由来嗅神経細胞の培養に伴う感染の危険性に関して検討を行い(実験1)、2.脊髄損傷モデルマウスへの移植を行った(実験2)。実験1に関しては実験計画通り、学生実習後に安楽死処置がとられた犬10頭から内視鏡を用いて経鼻腔的に鼻粘膜を採取し、常法通りに初代培養を行い、3週間の時点で、発育細胞の検討と細菌のコンタミネーション(感染)の評価を行った。その結果、4頭で細菌あるいは酵母の発育が認められたため、移植細胞源としての鼻粘膜の安全性に対する再検討が必要であると考えられた。実験2に関しては、移植細胞の安全性の観点から、他の組織由来幹細胞あるいは同等の細胞による移植実験を行った。その際、安全性ならびに利便性にも保障されている脱分化脂肪細胞(DFAT)あるいは脂肪由来幹細胞の使用を検討し、当該年度は脱分化脂肪細胞(DFAT)を脊髄損傷モデルマウスへ移植し、その安全性と脊髄機能改善の評価を行った。脊髄損傷モデルマウス12頭を作成し、6頭はコントロールとして細胞を移植せず、6頭には細胞移植を実施したところ、細胞を移植した群において、コントロールと比較して有意に運動機能が改善した結果が得られた。また組織学的にも再生像を認め、その有用性が証明された。さらに癌化や感染等の合併症も認められなかったことから犬の脊髄損傷症例に対する新たな治療法としての可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は初年度に遅れた再実験ならびに追加実験を実施し、その結果を検討したところ、犬の嗅粘膜由来嗅神経鞘細胞ならびに幹細胞は常時、採取できる可能性は示唆されたが、感染をコントロールすることが重要であることが判明した。同時に他の移植細胞となる可能性がある脱分化脂肪細胞を脊髄損傷モデルマウスへ移植し、その有用性と安全性を評価したところ、コントロール群として移植群では有意に歩行機能が改善され、さらに移植に伴う弊害は認められなかった。したがって、おおむね当初の研究目的と同等まで研究結果が得られている状況ではあるが、当該年度の研究結果に伴い、犬の嗅粘膜の感染コントロールという新たな課題に対する検討を実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果から、犬の鼻粘膜使用には培養細胞環境の感染が重大なリスクとして生じた。したがって、採取時に採取器具等の滅菌、採取したサンプルの取り扱い、抗生物質の選択を再度検討し、改善方法を検討する。また同時に、今回有用性が示された脱分化脂肪細胞に関して犬からも同様に採取が可能か、そして犬脂肪由来脱分化脂肪細胞を脊髄損傷モデルマウスへと移植し、その効果判定を実施する。
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Research Products
(1 results)