2014 Fiscal Year Research-status Report
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25850239
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 一彬 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (40615639)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 里山保全 / 森林管理 / 都市近郊林 / 市民団体 / 地方公共団体 / 土地所有者 / 森林環境税 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2点の課題に重点的に取り組んだ。 1. 私有緑地の所有単位での植生区分手法の検討 都市近郊地域の高解像度衛星画像を取得し、画像分析を行った。既存植生図などの情報を参照しつつ、それらよりもより詳細で、土地所有の単位と対応付けが可能なスケールでの植生区分図の作成を試みた。夏と冬の二時期の画像に対してオブジェクトベース画像分類の手法を用いることで、樹冠の形状や冬季の落葉による反射特性の変化などの情報をもとにした植生分類図を作成した。現状では樹種レベルでは十分に分類精度が高くないことから、今後、より詳細なグラウンドトゥルースなどの情報を加えて、分類精度の向上を試みる。あわせて、植生に影響を与えていると想定される地籍図などの土地所有情報についても地理情報化を進めている。 2.私有緑地管理に取り組む地方公共団体や市民団体を対象とした事例調査 都市近郊地域に位置する自治体を対象として、森林環境税などの独自財源を活用した樹林地管理を行っている取り組み事例を収集した。こうした取り組みは、既存の緑地保全制度の展開を制限している財源上の制約を克服し、私有緑地管理を促進する手段として有力と考えられるが、これまでその実態を評価した研究は少なかった。本研究では、茨城県で展開されている「身近なみどり整備推進事業」の運用実態を自治体担当者らへの聞き取り調査から詳細に把握し、その結果、事業導入面積の点では大きな成果が認められるものの、継続的な管理を実施し評価する体制が整っていないことが課題として明らかにした。関連して、既往研究における緑地管理制度運用実態評価についてレビューし、総説として取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、私有緑地の管理促進に有効な制度のあり方を、土地所有者の管理実態と市民団体のネットワークの両面から明らかにすることを目的としている。本年度の緑地管理制度事例調査を通じて、管理促進のための森林環境税などによる財源確保の有用性と、継続的な管理という点からの限界について明らかにした。また、再度の所属変更に伴う環境の変化に合わせて、研究協力者らとの協力体制や地理情報解析環境を再構築した。以上より、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまで収集したデータをもとにした土地所有と植生管理状況の関係性についての空間分析と、継続的な管理を支える仕組みを制度のなかに埋め込むための自治体や市民団体の間の経済的・社会的関係に関する事例分析に主に取り組む。具体的な内容として、前者については、多摩丘陵地域を対象に、植生分類図などの地理情報データベースの構築を引き続き進めるとともに、現地での管理実態調査も合わせて、複合的に植生管理状況を評価することを試みる。後者については、同じく多摩丘陵地域に加えて、首都圏近郊で比較的まとまって樹林地が分布している2地域(平成26年度に事例調査を行った茨城県南部の稲敷台地周辺地域と、埼玉県南部の三冨新田地域)を対象に加えて、緑地管理に取り組む団体の事例収集および団体間の知識技術伝達・管理作業連携に関する分析を、研究協力者、地方公共団体などの協力を得て行う。
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Causes of Carryover |
再度の所属異動にともない、研究協力体制や地理情報解析環境の再構築を優先したために、主に物品費や人件費・謝金の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費および人件費・謝金については、地籍図などの地理空間情報の整備、質問票調査協力者への謝金などに使用する。旅費およびその他の経費については、翌年度の成果とりまとめの際の学会発表・論文投稿および掲載関係に主に使用する。
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Research Products
(5 results)