2014 Fiscal Year Research-status Report
コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンによる神経可塑性の制御機構
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25860057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 真路 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (60533792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖鎖生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカンは発生初期の脳において拡散して存在するが、成体になると抑制性神経細胞の周囲に濃縮され、特殊な細胞外マトリクスであるペリニューロナルネットを形成する。申請者は、これまでに生後の発生に伴うコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンの変動によって、ペリニューロナルネットの構造が変化し、それにより神経可塑性が制御されることを示した。つまり、発生初期に存在する6-硫酸化コンドロイチンを成体でも過剰発現する遺伝子改変マウス (C6ST-1 TGマウス) は臨界期が終了した成体でも強い可塑性を維持することを報告した。しかし、C6ST-1 TGマウスにおいてペリニューロナルネットの形成が低下する分子機構は不明であった。本年度の研究によって、6-硫酸化コンドロイチンの過剰発現は主要なコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるアグリカンの減少を導くこと明らかにした。他のペリニューロナルネットの構成成分は過剰な6-硫酸化コンドロイチンによって影響を受けないことから、これはアグリカンに選択的な現象であると考えられた。アグリカンの減少は高齢マウスで顕著であった。つまり、6-硫酸化コンドロイチンに富むペリニューロナルネットは安定性に乏しく、一般的なペリニューロナルネットより分解されやすいため、C6ST-1 TGマウスはペリニューロナルネット形成不全を示し、神経可塑性に異常が生じることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6-硫酸化コンドロイチンの過剰発現によってアグリカンが選択的に減少することが明らかとなった。さらに、6-硫酸化コンドロイチンの過剰発現は抑制性神経細胞だけでなく、興奮性神経細胞のシナプス可塑性にも関与することを示す結果が得られ、コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンによる神経可塑性の制御機構の解明に近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内エレクトロポレーション法によって神経細胞種選択的にコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンを改変し、ペリニューロナルネット形成および神経可塑性に与える影響を検討する。また、ペリニューロナルネット形成の異常は、統合失調症など精神疾患で見られるため、コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化の機能を解明することにより、精神疾患治療への応用が期待される。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが抑制性神経細胞のシナプス可塑性に与える影響を検討した。その結果抑制性神経細胞だけでなく、興奮性神経細胞のシナプスにも異常が生じる可能性が浮上した。そこで計画を変更し、コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが興奮性神経細胞のシナプス可塑性に及ぼす影響を解析することとしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンが興奮性神経細胞のシナプス可塑性に与える効果を解明する研究を計画した。この検証には、子宮内エレクトロポレーション法を用いて興奮性神経細胞に選択的にコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化パターンを改変する実験を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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