2013 Fiscal Year Research-status Report
低酸素による右心室肥大の意義と心不全への変遷機構の解明
Project/Area Number |
25860184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
稲垣 薫克 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (20638366)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 右心不全 / 右心肥大 / 肺高血圧 / 慢性低酸素 |
Research Abstract |
初年度は慢性低酸素性肺高血圧による右心肥大モデルを用いて,肺高血圧の心肺機能適応期における心肺の機能および構造の変化についての検討をおこなった. 始めに心肥大因子であるβ1アドレナリン受容体に着目し,その全身性のノックアウトマウス(β1 KO),およびその遺伝的バックグラウンドであるC57BL6マウス(WT)に3週間の低酸素を曝露(8% O2)し,通常酸素飼育との比較をおこなった.麻酔下で動脈圧,右心室圧の計測をおこない,安楽死後に心臓を摘出して右心室重量比(RV/LV+Sptum weight)を算出した.その結果,右心室収縮期圧(RVSP)は両群において慢性低酸素負荷(CH)により有意に増加した.右心室重量比も両群においてCHにより有意に増加したが,KOとWTでは差はみとめられなかった.次に,アドレナリン刺激の下流因子でもあるCa2+に着目し,細胞内におけるCa2+の働きを仲介するセンサータンパク質の一つであるNeuronal Ca2+ sensor-1(NCS-1)のノックアウトマウス(NCS-1KO)における低酸素誘発の右心室肥大の形成について検討した.その結果,RVSPはCHにより両群で同程度の増加を示したが,CH誘発の右心肥大はNCS-1KOにおいて有意に減弱した.平均動脈圧および心拍数についてはすべての群で差は認められなかった.これらの結果から,NCS-1がCHによる肺高血圧により生じる右心肥大の形成において重要な役割を持つことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は右心不全モデルとして低酸素誘発の右心肥大モデルをマウスに適用して実験をおこない,これまでに低酸素誘発の右心肥大形成において,NCS-1が重要な役割を担っていることが明らかになった.しかしながら,当初予定していた慢性低酸素下における右心冠動脈や肺動脈の慢性計測や交感神経活動計測をマウスに応用する場合には,実験装置の大きさが動物に対して大きすぎるために困難であることが判明した.そのため,これらの実験項目に対しては,対象をラットに置き換えて実験を再開する. 本年度は慢性低酸素負荷における右心室圧および呼吸代謝測定に関しては,昨年度と同様にマウスを対象として実験をおこない,新たにラットを対象とした実験を組み込む.ラットを対象とした右心不全モデルは,モノクロタリンをラットに皮下投与することにより作成できることが先行研究で多数報告されている.したがって,慢性低酸素負荷による右心肥大モデルに加えて,右心不全モデルとしてモノクロタリン投与ラットを用いて実験をおこなう.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,慢性的な右心室における圧負荷に対する冠循環および肺血管機能変化についての検討を行うと同時に,心肺機能の覚醒下における評価方法の確立を目的として実験を行う. 初めに,ラットの右心肥大モデルとして肺動脈バンディングモデルを作成し,術後1週間および3週間での冠血管評価を行う.また右心不全モデルとしてモノクロタリン(60mg/kg)を皮下投与し,3週間後のラットにおける冠血管機能評価を行い,正常ラットと右心肥大ラットおよび右心不全ラットの冠血管機能および構造における比較・検討をおこなう.冠機能評価については,大型放射光施設(Spring-8)の高輝度放射光を用いたX線高速微小血管造影法(Shirai et al. Circ Res.2013)によりおこなう. また,心肥大から心不全への過渡期における右心冠循環および肺血流の慢性計測による評価をおこなう.具体的には,右心冠循環の変化については,レーザー血流計プローブ(Omegawave)を右心室表面に固定することによりおこない,肺血流の変化の測定に関しては,超音波血流プローブ(Transonic)を肺動脈に留置することによりおこない,実験後に心臓および肺を摘出し,組織化学染色ならびにウェスタンブロッテイングによるタンパク質発現の定量をおこなう. 低酸素負荷時の右心室および肺機能の評価としては,テレメトリー法と呼吸代謝測定による慢性計測をおこなう.具体的には,右心室内にカテーテルを留置し,術後5日間の回復期をおいた後に,酸素-二酸化炭素分析装置を接続した呼吸チャンバー内に動物を入れ,慢性低酸素負荷時の右心室圧および呼吸・代謝動態の経時変化を測定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた肺動脈測定に関して,現在保有しているプローブでは慢性計測がプローブの形状から不可能であることが予備実験により判明した.そのため,肺動脈血流の慢性計測に適したプローブの形状に関して更なる予備検討が必要となり,プローブの購入を見送った.そのため,予算の一部を本年度に回して一括で購入する予定に変更した. 昨年度に未購入であるTransonic社製の超音波血流プローブを本年度に購入する.当初に購入する予定であったプローブの型式をMC0.7PSBからMC1.5PSLに変更して購入する予定である.
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Research Products
(1 results)