2013 Fiscal Year Research-status Report
V1のアクチン重合依存的なドパミン生合成酵素発現増強機構のパーキンソン病治療応用
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25860389
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川畑 伊知郎 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30579743)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | V-1 / tyrosine hydroxylase / dopa decarboxylase / Nurr1 / Parkinson's disease / serum responsive factor / RhoA / cofilin |
Research Abstract |
本年度はV-1遺伝子によるチロシン水酸化酵素(TH)、芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)、核内受容体Nurr1の統合的発現制御カスケードを培養細胞系およびマウスレベルで明らかにした。これは新たなパーキンソン病(PD)治療応用にむけた分子基礎確立および安全性の検証において重要な意義がある。ドパミン(DA)生合成モデル細胞であるPC12D細胞および黒質DA作動性ニューロン初代培養系(DAニューロン)を用い、V-1 siRNAによる内在性V-1ノックダウン、V-1発現plasmidまたはV-1発現レンチウイルスを用いたV-1過剰発現による上記DA作動性マーカーの発現レベル変化および発現制御機構を解析した結果、V-1はRhoA活性を上昇させ、LIMキナーゼとcofilinのリン酸化レベル上昇によるアクチン重合を促進し、MAL/SRF依存的な転写活性が増強された。さらにChIP解析の結果TH、AADCおよびNurr1がSRFの標的遺伝子であることが新たに明らかとなり、各遺伝子におけるプロモーター領域内のSRF結合部位(CArG box)の同定に成功した。また上記遺伝子におけるSRF結合量はV-1過剰発現により増大しノックダウンにより減少した。これらのV-1カスケードがin vivoにおいても同様に制御されているかを検討するためC57BL6マウスにV-1発現レンチウイルスの脳内投与を行った結果、細胞培養系と同様にLIMKおよびcofilinのリン酸化レベル上昇が認められ、TH、AADC、Nurr1およびVMAT2発現レベルの上昇が観察されが、マウスの異常行動は認められなかった。さらに細胞培養系におけるMPTP処置PDモデルDAニューロン変性は、V-1過剰発現により神経突起後退および上記各種DA作動性マーカーの発現レベル低下を軽減することができたことから、V-1遺伝子がMAL/SRF系の活性化により各種DA作動性マーカーを発現増強し、in vivoレベルにおいても安全性が検証されPD治療応用が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、パーキンソン病(PD)新規治療法の臨床応用を目的とするうえで、ドパミン(DA)生合成酵素群であるチロシン水酸化酵素(TH)および芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)とDA作動性マーカーである核内受容体Nurr1のV-1依存的新規統合的発現制御メカニズムを明らかにし、V-1遺伝子導入の安全性を検証することを目的とした。このことは、PD遺伝子治療において今日複数のDA生合成酵素遺伝子群を導入する必要性があるが、単一遺伝子により簡便かつ安全に遺伝子治療応用が可能であることを示す。DA生合成モデル細胞であるPC12D細胞、黒質DA作動性ニューロン初代培養系(DAニューロン)、およびin vivoにおいて、V-1による上記各種DA作動性マーカーの発現制御メカニズムを解析した結果、V-1がRhoAを活性化してLIMK/cofilinのリン酸化レベルが上昇し、アクチン重合が促進された結果MAL/SRF依存的シグナル経路が増強され、SRF標的遺伝子であるTH、AADCおよびNurr1の発現レベルが統合的かつ協調的に増大することが明らかとなった。このメカニズムはアクチン重合促進とPDにおいて減少し運動疾患の原因となるDAの生合成酵素群の発現増強をともなう、抗神経変性および抗伝達物質レベル低減作用をもつ、既知のCRE依存的な発現制御機構とは異なるユニークな新規メカニズムであり、細胞レベルからin vivoレベルで生理的に機能していることが本研究で新たに明らかにすることができた。さらにMPTP処置細胞において上記DA作動性マーカー群の発現レベル低下を回復し、神経突起消失を軽減させ抗神経変性作用を示したことから、MPTP誘発性PDモデルにおいてV-1遺伝子治療の有用性を明らかにすることができた。これらの結果からV-1遺伝子によるDA作動性マーカーの統合的発現制御機構のPD治療応用における有効性および安全性を示すことができた点において、当初の計画どおりの成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は本研究の最終目的であるV-1遺伝子治療の有効性と安全性を検証するため、まずV-1ノックアウトおよびMPTP処置によるドパミン(DA)量低下に連関するパーキンソン病(PD)様臨床学的症状を、HPLCおよび行動解析により詳細に検討し、V-1遺伝子治療開始のタイミングを精査する。具体的には、免疫組織化学的解析により細胞骨格の脱重合および神経変性が観察され始めてからPD の臨床学的特徴発症までのタイムコースを精査し、さらにDA レベル低下とPD 様症状発症との時間的連関を検討する。また初年度で見出したV-1のアクチン重合促進、およびDA生合成酵素の統合的時空間的発現制御機構を応用し、PDモデルマウスへのV-1遺伝子導入による神経再生とDA生合成酵素発現量の回復を検証する。さらにFloxed-V1ノックアウトおよびMPTP処置によるDA作動性神経の変性・アクチン脱重合とDA生合成量変化の時空間的相関性を解析して治療開始のタイミングを精査し、本申請の最終目標である新規PD治療法の最終検討として、MPTP投与PDモデルマウスを用いたV-1遺伝子治療の臨床学的有効性、および安全性を検証する。具体的には、MPTP投与マウス無治療群とV-1遺伝子治療群において、V-1レンチウイルスの脳内投与を開始地点とする時間依存的なDA生合成酵素発現量回復、及び神経変性抑制効果を免疫組織化学的、生化学的解析により定量し、DA量回復をHPLC測定により解析する。さらにDA量回復に伴ったクラスピング運動等のPD様臨床学的症状の軽減を行動解析により検討し、V-1遺伝子治療の臨床症状改善における有効性と安全性を検証する。以上の手法を用いて、MPTP投与PDモデルマウスにおけるV-1遺伝子治療による新たな概念のPD治療法が、DA生合成酵素発現、DA量、そして行動レベルで、PDの病理学的および臨床学的症状を改善できるか統合的に検証し、確立されたDA生合成酵素の統合的新規発現制御メカニズムを新規治療法へ応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文投稿による審査結果内容に沿った実験計画および各種試薬を論文共著者と議論し再検討するために時間を要したため。 新規V-1標的分子のノックダウン用各種siRNA、siRNA導入試薬、標的分子の標識抗体
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[Presentation] V-1 maintains and augments nigrostriatal dopaminergic function through actin polymerization in vitro and in vivo2013
Author(s)
Ichiro Kawahata, Shiori Ohtaku, Yanxin Lai, Junichi Morita, Shigeki Kato, Akiko Tabuchi, Masaaki Tsuda, Kazumasa Ohashi, Kensaku Mizuno, Yasuhiko Izumi, Toshiaki Kume, Akinori Akaike, Yoshihisa Tomioka, Hiroshi Ichinose, Kazuto Kobayashi, and Tohru Yamakuni
Organizer
Neuroscience 2013
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
20131109-20131113
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