2013 Fiscal Year Research-status Report
虐待ストレスによる脳及び内分泌系の変化の解明と虐待診断への応用
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25860492
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40512497)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会医学 / 高齢者虐待 / 小児虐待 / 虐待ストレス / 内分泌系変化 / glucocorticoid receptor / 神経系変化 / アポトーシス |
Research Abstract |
これまでわれわれは,各虐待に基づくストレスが副腎内分泌系に変化をもたらすことを報告してきた。近年,小児の被虐待経験は成人後のうつ病など精神疾患の発症リスクを高めると言われており,その原因として虐待ストレスに反応して過剰に産生されるglucocorticoidによる脳の器質的変化が想定されている。そこで今回,虐待ストレスによる内分泌系変化がもたらす神経系変化について,実際の高齢者虐待死剖検例を対象として検討を行った。 高齢者の身体的虐待死11例,対照例(鋭器損傷死,単独の鈍器損傷死,多発外傷死各6例)の前頭葉のパラフィン切片を試料として,glucocorticoid receptor (GR)の発現について免疫組織学的に検討したところ,いずれも皮質II,III層の神経細胞に発現を認めたが,虐待例と対照例でGR陽性細胞数に有意な差はみられなかった。 次に,TUNEL (TdT-mediated dUTP nick end labeling)法を用いてアポトーシス細胞数を計測したところ,虐待死例,対照例ともに頭部外傷受傷後の生存時間が比較的長い例においてアポトーシスを起こした神経細胞がみられたが,両群でアポトーシス細胞数に有意な差はみられなかった。 以上の結果から,高齢者剖検例においては虐待による内分泌系変化がもたらす神経系変化について証明することはできなかった。今後,小児剖検例において同様の検討を行い,虐待によって神経系変化が起こっている可能性を証明し,社会に対して虐待予防の必要性を訴えていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高齢者剖検例,小児剖検例について,複数機関との共同研究によって予定通り検討に充分な例数を収集することができた。また,前項に記載したように,高齢者剖検例においては,虐待による内分泌系変化がもたらす神経系変化を証明することはできなかったが,実際の剖検試料を使用してGRの免疫組織学的染色法,アポトーシス細胞の検出法(TUNEL法)を確立することができた。今後,小児剖検例において同様の検討を行うことで,本研究の目的である虐待による内分泌系変化がもたらす神経系変化を証明することができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と継続して虐待事例の例数を増やし,同様の検討を小児剖検例において行う。また,今回対象とした指標以外にも,ネグレクト(養育放棄)による絶食状態で変化が起こると考えられるorexin-1,2 receptor(OR1R, OR2R)やleptin receptor (LepRa-f)の発現についても,虐待死例と対照例で比較し,ネグレクトの新たな証明法として有用な指標を検索する。最終的に虐待に基づくストレスの危険性,虐待予防の重要性を社会に訴えるための基礎資料の作製を目指す。
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Research Products
(9 results)