2014 Fiscal Year Annual Research Report
虐待ストレスによる脳及び内分泌系の変化の解明と虐待診断への応用
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25860492
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40512497)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会医学 / 拘束ストレス / 小児虐待 / 虐待ストレス / 胸腺萎縮 / CCR5 / アポトーシス / 法医病理学的証明 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでわれわれは,各虐待に基づくストレスが副腎内分泌系を介して神経系に変化をもたらすことを報告してきた。以前から神経・内分泌系と免疫系との間にも複雑なクロストークが存在することが知られている。そこで今年度は,炎症においてマクロファージの遊走等に関わるCCケモカイン受容体の1つであるCCR5に注目して虐待ストレスに基づく内分泌系の変化が免疫系にもたらす変化に関する検討を行った。 (1)拘束ストレスマウスにおける検討:野生型マウスに拘束ストレスを加えると,胸腺におけるCCR5発現細胞数が有意に増加した。蛍光二重免疫染色によってCCR5発現細胞の大部分はマクロファージであることが確認された。そこで,CCR5ノックアウト(KO)マウスと野生型マウスとの間で拘束ストレスに対する胸腺の変化を検討したところ,野生型マウスと比較してCCR5 KOマウスでは胸腺リンパ球のアポトーシス細胞数が有意に少なく,胸腺の萎縮の程度が有意に軽減していた。 (2)実際の剖検例における検討:小児虐待死8例,対照例7例(鋭器損傷死,単回の鈍器損傷死,多発外傷死)の胸腺を試料として,CCR5発現について検討したところ,動物実験の結果と同様に対照例と比較して虐待死例ではCCR5発現細胞が有意に増加しており,発現細胞の大部分はマクロファージであることが確認された。 以上の結果から,ストレスによる胸腺の萎縮にはCCR5発現が関与していることが示唆され,虐待死例の胸腺においてもCCR5の高発現が確認されたことから,小児虐待の法医病理学的証明の新規マーカーとなる可能性,さらには虐待による胸腺萎縮を予防する標的マーカーとなる可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)