2015 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災が急性心筋梗塞の発症と医療体制に及ぼす影響に関する研究
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25860578
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
羽尾 清貴 東北大学, 大学病院, 助教 (30647954)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 循環器 / 急性心筋梗塞 / 震災 / 救急医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は東日本大震災が宮城県における急性心筋梗塞(AMI)の発症と急性期医療、急性期予後に与えた影響を長期間にわたって検討することである。 宮城県内の全AMI患者の登録研究を行っている宮城県心筋梗塞対策協議会のデータベースに2008年から2011年に登録された症例を対象に検討を行った結果、2011年の宮城県内AMI患者の院内死亡率は2008年~2011年と比較して改善を認めており(8.3% vs. 10.5%, P<0.05)、特に震災直後2か月間で顕著であった。それと同時にAMI発症から入院までの時間の短縮(120分 vs. 240分, P<0.01)と冠動脈インターベンション施行率の上昇(86.8% vs. 76.2%, P<0.01)が認められた。さらに震災後には発症から3時間以内に入院した早期入院患者の割合が著名に増加しており(59.1% vs. 47.0%, P<0.05)、この早期入院患者群においてのみ院内死亡率の改善を認めた(7.9% vs. 11.4%, P<0.05)。以上から東日本大震災直後に平時と比較してAMI救急医療体制の改善が認められ、発症から来院までの時間の短縮と冠動脈インターベンション施行率の増加が関与していると考えられた。 さらに2014年までの急性心筋梗塞の発症率の推移をみたところ、2005年~2014年までの10年間における年齢調整AMI発症率(/10万人・年)は40前後で有意な変化を認めなかった。同様の傾向を男性で認めた一方で女性においては2005年~2014年までの10年間で17.7から12.2へと有意な減少を認めており(P<0.05)、この傾向は2011年を前後に変化を認めなかった。また、院内死亡率においては2005年~2014年までの10年間で男女ともに有意な変化を認めなった。以上から、東日本大震災のAMI発症率、死亡率への長期的な影響は認めなかったと考えられた。
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Research Products
(3 results)