2013 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間葉系幹細胞における転写因子GATA-2の機能解析
Project/Area Number |
25860776
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沖津 庸子 東北大学, 大学病院, 助教 (80451558)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | GATA2 / 間葉系幹細胞 / 再生不良性貧血 |
Research Abstract |
ヒト骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)におけるGATA2発現を制御する外的因子を明らかにするため、MSCでGATA2の発現低下が報告されている再生不良性貧血(AA)の発症に関連したサイトカインTGFβ、INFγ、TNFα、IL-1β、IL-17AとBM-MSCとの共培養を行ったところ、脂肪細胞分化が抑制されたことから、炎症性サイトカインがMSCの脂肪細胞分化を抑制する可能性が示唆された。また、造血幹細胞(HSC)でGATA2発現を誘導するBMP4との共培養では、GATA2の発現が上昇し、脂肪細胞分化が抑制されたことから、BMP4はGATA2を調節する因子の可能性が示唆された。 siRNA干渉によってGATA2発現を抑制したBM-MSC検体のDNAマイクロアレイ解析を行い、発現遺伝子プロファイルを検討した。発現上昇遺伝子は90遺伝子、発現低下遺伝子は189遺伝子で、発現が低下した遺伝子の中にはLAMB1やCD44などの細胞接着因子や、骨芽細胞分化調節の報告のあるENPP1が含まれていた。GATA2制御遺伝子群の遺伝子オントロジー解析ではGATA2制御遺伝子群は細胞周期、発生過程、細胞増殖および分化などに関与することが明らかとなった。 プロファイル解析にて細胞周期制御関連遺伝子、特にCHEK1、CCNB1、CCNB2、GTSE1、CDC20などサイクリン依存性キナーゼ(CDK)/サイクリン系関連遺伝子の発現が低下していたことから、GATA2の発現を抑制したBM-MSCの細胞周期を解析すると、GATA2発現抑制BM-MSCでは、G0/G1期の細胞数が増加し、S期の細胞数が低下傾向を示し、GATA2はCDK/サイクリン系遺伝子を介して細胞周期調節にかかわっている可能性が示唆された。 これらの結果は、GATA2が造血細胞と造血微小環境の維持に関与していることを示唆するものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSCの維持に必須の転写因子であるGATA2は、MSCから脂肪細胞への分化においても重要であると考えている。骨髄不全症の代表疾患であるAAにおいては、HSCとMSCの両者でGATA2が低下していることが報告されている。そこで、MSCでGATA2の発現低下が報告されているAAの発症に関連した炎症性サイトカインの影響をMSCで検討したところ、脂肪細胞分化は抑制され、これらのサイトカインについては、GATA2発現調節因子としては考えにくい結果となった。次に、BM-MSCでGATA2に制御される遺伝子群を検討したところ、GATA2制御遺伝子群は細胞周期、発生過程、細胞増殖および分化などに関与することが明らかとなった。そこで、GATA2の発現を抑制したBM-MSCの細胞周期を解析すると、GATA2発現抑制BM-MSCでは、G0/G1期の細胞数が増加し、S期の細胞数が低下傾向を示し、GATA2はCDK/サイクリン系遺伝子を介して細胞周期調節にかかわっている可能性が示された。 これらの結果は、GATA2がヒトBM-MSCにおいて分化方向の決定に関与しているとともに、造血細胞と造血微小環境の維持に関与していることを示唆するものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
GATA2がMSCの維持に重要であると考えられるため、今後はGATA2の発現変化による骨芽細胞分化能の検討や、近年MSCは骨髄微小環境における骨芽細胞や脂肪細胞など間葉系細胞の前駆細胞であるだけでなく、自身の造血細胞への関与も報告されていることから、GATA2発現変化がMSCの造血支持能に及ぼす影響についての検討などを行い、それらの結果をin vivoでも明かにしていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた学会発表を次年度に延期したこと、物品納品の遅延によって生じたものである。 延期した学会発表や物品納品に必要な経費として平成26年度請求額とあわせて使用する予定である。
|