2013 Fiscal Year Research-status Report
小児炎症性腸疾患における新規便中カルプロテクチン測定法の臨床的有用性の検討
Project/Area Number |
25860889
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
青松 友槻 大阪医科大学, 医学部, 助教 (10465619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 疾患活動性 / バイオマーカー / 小児 |
Research Abstract |
腸管炎症の指標である便中カルプロテクチンを、極めて短時間で測定可能な新規測定法(金コロイド凝集法)で測定し小児炎症性腸疾患における有用性を検討している。潰瘍性大腸炎、クローン病、健常児から約300検体の便検体を採取できた。従来のELISA法での測定値との整合性や臨床所見(おもに内視鏡的な疾患活動性)との相関に関する検討を進めている。 従来のELISA法による測定値との相関係数は0.98(p<0.01)と高く、金コロイド凝集法でも便中カルプロテクチンを正確に測定できると考えられた。潰瘍性大腸炎、クローン病の内視鏡スコアであるMatts’分類、SES-CDとの相関係数はそれぞれ0.70、0.58(いずれもp<0.01)と高く、金コロイド凝集法で測定した便中カルプロテクチンは両疾患の内視鏡的重症度を反映していると考えられた。便中カルプロテクチンが腸管炎症をとらえる感度、特異度はそれぞれ、潰瘍性大腸炎では91.7%、85.7%、クローン病では96.1%、50.0%と優れていた。潰瘍性大腸炎では、内視鏡で炎症所見を認めなかった患児の便中カルプロテクチン(中央値31.5μg/g、n=14)は健常児(中央値33.3μg/g、n=57)と有意差がなかったので、金コロイド凝集法による便中カルプロテクチンは粘膜寛解の判定にも有用であることが示唆された。臨床的には寛解であるにも関わらず内視鏡では炎症所見を認める症例の便中カルプロテクチンは内視鏡で炎症所見を認めない症例より有意に高値であり、潜在的な腸管炎症をとらえる感度はCRPや赤沈、便中ヘモグロビンより高かった。以上より、金コロイド凝集法による便中カルプロテクチンは小児炎症性腸疾患において腸管炎症を反映する有用なバイオマーカーであり、短時間で測定できるため外来などでリアルタイムに腸管炎症をモニタリングすることが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金コロイド凝集法とELISA法による測定値の整合性の検討、および金コロイド凝集法による便中カルプロテクチンが内視鏡による疾患活動性評価を反映するバイオマーカーとなるかどうかの検討に関しては、予定通り約300検体を集めることができ上記のように有用な結果も得ることができた。このうち、臨床寛解の患児から採取した検体に関しては、金コロイド凝集法による便中カルプロテクチンが将来の再燃予測に有用かどうかを検討するために臨床経過を経過観察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
炎症性腸疾患の患児で大腸内視鏡を行う際は便検体を採取し、ひきつづき検体数を増やして腸管炎症のバイオマーカーとしての有用性を検討していく。再燃予測における有用性は、検体採取から1年間臨床経過を追跡できた後に解析を行う予定である。前者に関しては現時点で得られた結果を論文にまとめ、アクセプトされた。後者に関しても今後解析をすすめ、得られた結果を論文にまとめて英文雑誌に投稿したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初想定していたよりも順調に検体を収集することができたため、一度に多数の検体を測定できたことが最も大きな理由と考えている。また、測定系の上限を超えたときに希釈率をあげて再測定する検体が予想より少なかったことも一因であると思われる。 当科を受診する炎症性腸疾患の患児は現在も急増しており、内視鏡検査の件数も増加している。収集できる検体は今後もさらに増加すると見込まれる状況であり、繰り越した研究費も用いて研究を進めていきたいと考えている。
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