2013 Fiscal Year Research-status Report
新規融合遺伝子の発見を経緯としてPDGFによる隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍化の理解
Project/Area Number |
25860960
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
眞鳥 繁隆 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80529470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 隆起性皮膚線維肉腫 / 融合遺伝子 / 血小板由来増殖因子 / 間葉系腫瘍 |
Research Abstract |
本研究課題は、琉球大学の皮膚科教室での隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の原因となる、全く新規のCOL1A2-PDGFB融合遺伝子の発見を経緯とする。 この特徴的な間葉系腫瘍の腫瘍化メカニズムを、これまでに知られている血小板由来増殖因子(PDGF)の高発現による持続的な自己増殖刺激のみならず、PDGF受容体側の変異による定常的な活性化という両面より検討することで、その腫瘍化過程を再認識することを目標とした。 さらにリガンド側の異常としては、本研究課題のきっかけである、全く新規の融合遺伝子をさらに対象を広げ、PDGF遺伝子を広く腫瘍細胞に自己分泌しうる間葉系遺伝子との融合との観点より、RT-PCRにより探索する。 さらに腫瘍細胞自身でのPDGFの持続発現により腫瘍化プロセスを再現することで、近い将来におけるDFSPの治療薬としてのリン酸化阻害薬の選択を可能とすることを目標とした。 今回の研究課題においては、我々は琉球大学皮膚科教室と共同研究機関である群馬大学皮膚科においてこれまでに診断・治療に当たった30余例の隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の凍結組織や病理標本を用いて、この腫瘍細胞の形質を、従来より知られているPDGFのリガンド側の持続分泌による腫瘍化と、PDGF受容体側の持続活性化の両面より解析し、その腫瘍化プロセスを再検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の対象である隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)全例の免疫組織染色と、凍結標本が存在する組織においてはRNAやDNAを抽出の後にRT-PCRやPCR法により、その遺伝子変異の確認を続けている。 一方、リガンド側の異常としては、本研究課題のきっかけである、全く新規の融合遺伝子をさらに対象を広げ、PDGF遺伝子を広く腫瘍細胞に自己分泌しうる間葉系遺伝子との融合との観点より、RT-PCRにより探索した。 琉球大学皮膚科内の10数症例と群馬大学の20症例弱の隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の病理標本を用いて、PDGF-Bの蛋白発現、PDGF受容体の細胞内チロシン残基の数カ所のリン酸化の有無を免疫組織学的に決定した結果、ほぼ全ての隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍組織が、組織中の少なくとも一部の腫瘍細胞はPDGFを異所性に発現することを確認し得た。さらに受容体側の遺伝子変異による恒常的な活性化現象は、解析し得た全ての腫瘍組織において否定できた。このことより隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍化機序としては全て、腫瘍細胞自身のPDGFの自己分泌により、恒常的なオートクラインあるいはパラクラインによる持続刺激が元で、腫瘍性の増殖をきたすと断定的に考えるに至った。 本研究課題の、当初の目的である隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍化メカニズムとして想定した、血小板由来増殖因子(PDGF)の高発現による持続的な自己増殖刺激と、PDGF受容体側の変異による活性化という両側の刺激が考えられた中で、我々の腫瘍細胞の解析により、その腫瘍化過程は血小板由来増殖因子の自己発現による持続的な腫瘍性増殖であると理解しえた。即ち、隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍細胞自身には、PDGF受容体の遺伝子変異は存在せず、PDGFの過分泌以降は、健常な増殖シグナルのまま、この特異な中等度悪性度の腫瘍を維持していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
DFSPの30余例の症例中で、免疫組織染色によりPDGFの発現が確認された症例において、腫瘍より摘出したmRNAよりRT-PCR法により、COL1A1-PDGFBあるいは今回発見したCOL1A2-PDGFB融合遺伝子の存在を確認している。数割の隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)腫瘍細胞より抽出したRNAより、従来知られるコラーゲン1A1とPDGF遺伝子の融合した原因遺伝子の再確認のみが可能であった。今回新規に発見したコラーゲン1A2とPDGFとの遺伝子融合は、我々が発見し得た1症例のみの存在であった。 平成26年度以降、これらCOL1A1-やCOL1A2遺伝子の2種類をプロモーター遺伝子とする融合遺伝子を持たずに、免疫染色でPDGF蛋白の発現が確認された腫瘍について、この2種類の遺伝子以外での遺伝子融合により腫瘍化が生じている可能性を考え、PDGFB遺伝子を下流に設定した5‘RACE法により、その新規融合遺伝子の存在を確認する。 また隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の発生母地となると考えた線維芽細胞で強い発現活性を持ち、分泌シグナルペプチドをもつ遺伝子をターゲットとして、PDGF遺伝子間でRT-PCRによる遺伝子増幅を行った。具体的には1型コラーゲン以外のコラーゲンやエラスチン、ファイブロネクチンなどの遺伝子プライマーを準備し、RT-PCRを行う。 さらに、隆起性皮膚線維肉腫が、真皮に存在するどの間葉系細胞に類似する細胞であるかを決定するために、CD133, CD134, Slug, Sca1, CD34などの間葉系マーカーを選択し解析を続ける。まだ解析は進行中であるが隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍細胞と同一の発現パターンを示す細胞として、ヒトの毛包の中の毛母に存在する血管内皮細胞においてその幹細胞マーカーの発現が合致するという、特異な染色結果を得て、現在、解析を継続している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍化メカニズムを、これまでに知られている血小板由来増殖因子(PDGF)の高発現による持続的な自己増殖刺激のみならず、PDGF受容体側の変異による定常的な活性化という両面より検討することで、その腫瘍化過程を再認識することを目標とする。 対象となる稀な間葉系腫瘍の解析の症例の集積のために、琉球大学皮膚科教室と共同研究機関である群馬大学皮膚科においてこれまでに診断・治療に当たった30余例の隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の凍結組織や病理標本を用いる。このために琉球大学附属病院と群馬大学医学部附属病院での、これまでに蓄積した固定腫瘍組織を使用するための倫理委員会での承認に時間が掛かり、平成25年度中には実際の大規模スクリーニングを開始するには至らなかった 昨年度後半に琉球大学附属病院と群馬大学医学部での倫理委員会での承認を得ており、免疫用組織切片群の作製を終了した。今年度は全検体における多様なシグナル分子における発現を解析するための免疫組織学的解析を完了する。さらにCOL1A1-やCOL1A2遺伝子の2種類をプロモーター遺伝子とする融合遺伝子を持たずに、免疫染色でPDGF蛋白の発現が確認された腫瘍について、この2種類の遺伝子以外での遺伝子融合により腫瘍化が生じている可能性を考え、PDGFB遺伝子を上流や下流に設定したRACE-PCR法や次世代シークエンサーで一括し探索する。また隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の発生母地となると考えた線維芽細胞で強い発現活性を持ち、分泌シグナルペプチドをもつ遺伝子をターゲットとして、PDGF遺伝子間でRT-PCRによる遺伝子増幅を行った。具体的には1型コラーゲン以外のコラーゲンやエラスチン、ファイブロネクチンなどの遺伝子プライマーを準備し、RT-PCRを行う。
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Research Products
(8 results)