2013 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン酸受容体GluD1のシナプス形成機構および情動機能への関与
Project/Area Number |
25860982
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今野 幸太郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20599641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
GluD1は、GluD2とともにデルタ型グルタミン酸受容体に属している。GluD2は小脳プルキンエ細胞に限局して発現し、シナプスの形成と維持に関与していることが明らかになっている。一方、GluD1の遺伝子であるGRID1は、双極性障害や大うつ、統合失調症、自閉症との関連性が強く示唆されているが、生体におけるGluD1の生理学的役割や、脳におけるシナプス局在はいまだ不明である。本研究課題は、GluD1の脳におけるシナプス局在を明らかにし、GluD1遺伝子欠損マウスおよびGuD1部位特異的遺伝子欠損マウスを用いてシナプス形成機構および精神疾患発現機序への関与を解明することを目的とした。 平成25年度はGluD1の脳における局在を明らかにする目的で、GluD1 mRNAの詳細な空間発現パターンとその発現細胞の化学的特性をin situ hybridization法を用いて検討し、蛍光抗体法を用いてタンパクレベルでの分布を検討した。GluD1 mRNAは脳内に広く分布し、特に大脳皮質、大脳辺縁領域、小脳に強い発現が認められた。海馬では錐体細胞に、小脳では介在神経に強いことが明らかとなり、GluD1 mRNAの発現強度には細胞種選択性があることが判明した。GluD1タンパクの脳全体における分布はmRNAの発現パターンと一致した。小脳ではGluD1は平行線維と分子層抑制性介在神経の細胞体シナプス(PF-InS)のシナプス後膜に選択的に局在するとこが明らかとなった。さらにシナプス形成作用を調べる目的でGluD1欠損マウスを用いて検証した結果、野生型マウスに比べGluD1遺伝子欠損マウスではPF-InS数が半減していた。以上の研究結果より、GluD1は脳内に広く分布し、その局在はGluD2と同様に入力選択性が認められシナプス形成を促進する働きをもつことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画は順調に遂行でき、その結果を論文に投稿した。 Konno K, Matsuda K, Nakamoto C, Uchigashima M, Miyazaki T, Yamasaki M, Sakimura K, Yuzaki M, Watanabe M: Enriched expression of GluD1 in higher brain regions and its involvement in parallel fiber-interneuron synapse formation in the cerebellum. J Neurosci. In press.
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Strategy for Future Research Activity |
GluD1の遺伝子であるGRID1と双極性障害や大うつ、統合失調症や自閉症といった精神疾患との関連性が報告されている。今後はGluD1の発現が強い大脳辺縁系領域に焦点をあて、GluD1部位特異的遺伝子欠損マウスを用いて、情動機能を評価する各種行動試験を行い精神疾患発症機序に関与するGluD1の機能を解明する。平成25年度に遂行した脳内における局在解析と平成26年度の研究計画であるGluD1部位特異的遺伝子欠損マウスの表現型解析を通して、GluD1の関与するシナプス回路形成と伝達機能の制御機構、そして精神疾患発現機序の分子基盤解明に関する包括的な研究成果が得られることが期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、22594円の未使用額が発生した。これは平成25年度末に購入した物品の支払が平成26年4月に支払われることなったため、生じたものである。 平成26年5月現在では未使用額はない。
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Research Products
(4 results)