2014 Fiscal Year Research-status Report
放射線影響による正常・乳癌細胞相互作用における分子メカニズムの多面性の解明
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25861050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
NAM JinMin 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60414132)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線 / 乳癌 / 3次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正常細胞と癌細胞間における放射線照射後の遺伝子発現と分子メカニズムの違いに着目し、正常細胞に対しては放射線防護的に、癌細胞に対しては放射線感受的に機能する、新規ターゲットを発見する事を目的としている。 平成25年度は、3次元培養をした乳腺上皮細胞のマイクロアレイ解析により、X線照射後に正常構造を喪失した乳腺上皮細胞にて、遺伝子とタンパク質レベルで発現上昇する複数の分子を同定した。今年度は、これらの結果を用いて、さらに解析を進めており、正常構造の維持と同定したインテグリン関連分子の発現との間で相関を確認した。X線照射後に発現亢進が確認された分子は、細胞接着分子であるインテグリンの細胞内輸送の制御に関わる事が報告されており、本研究の実験系(X線照射後に正常構造を喪失した乳腺上皮細胞)においてもインテグリンの発現量との相関が見られた。特に、乳腺上皮細胞の正常構造と極性は細胞外基質による3次元培養によって維持され、その際、照射後の浸潤様形態の出現やインテグリン関連分子の発現も抑制された。また、X線照射によって正常極性が破綻した環境下では、上皮観葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition)の形態獲得や、浸潤能の亢進が確認された。これらの結果から、細胞外微小環境と正常組織の3次元構造・極性の維持によってインテグリンの発現が変動し、X線照射後の浸潤能獲得の抑制に関与する事が示唆された。X線照射後のインテグリンと関連分子の時間による発現量と局在の変化を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳腺上皮細胞を用いたX線照射後の3次元細胞培養により、正常極性構造の維持と遺伝子・タンパク質レベルでの発現量が相関する3つのインテグリン関連分子を同定できた。これらの分子が、X線照射によって、正常極性の維持と破綻した構造間で発現量が変動し、異なるシグナルの調節に関わる可能性を検討しており、当初の計画に沿って進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射後の、正常構造の維持と破綻に関わる分子メカニズムを細胞外の微小環境の影響を考慮し解析を行う。また、ターゲット分子をノックダウンした細胞を作製し、正常と癌細胞の照射後の3次元極性構造への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
本研究では、3次元培養した細胞の形態観察と画像の取得が必要であり、今年度末から次年度にデジタルカメラが附属した倒立ルーチン顕微鏡が必須だったため、購入に向けて10月から機種検討やデモを実施した。デモを行った最初の顕微鏡は画像の質が希望に沿わなかったため、数回に渡り複数の機種を検討し、さらにオプションの部品を工夫する事によって必要な仕様を満たす機種を決定する事ができた。これらの過程に4ヶ月程の時間がかかり、2月にライカ製ルーチン倒立顕微鏡を発注、3月に納品された。顕微鏡購入後の残額は、3月と次年度の研究遂行に必要とされる物品類を購入した。H26年度の未使用額のうち、3月の納品分の物品は会計処理の都合により4月支払となったが、研究の進捗には影響されない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の未使用額(1,124,618円)のうち、H26年度3月に納品された物品(1,073,358円)は4月に支払が完了した。また、51,260円はH27年度の経費と合わせ、必要な試薬・物品等の消耗品費として使用する事を計画している。
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Research Products
(1 results)