2013 Fiscal Year Research-status Report
肝虚血性再灌流障害(IRI)は脂肪肝成因によって異なるか?
Project/Area Number |
25861182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
藤井 武宏 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (00640690)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 / 脂肪肝 / フルクトース / 遺伝子組換えトロンボモジュリン / 肝移植 / 薬物治療 / 肝虚血 / マウス |
Research Abstract |
本研究目的の主である食事性成因により脂肪肝の虚血再灌流障害(IRI)の程度および機序の違いを示すために、既に確立済みの高脂肪食モデルに加え、本研究目的に掲げたフルクトースに起因する脂肪肝モデルにおいて、脂肪肝程度の評価(組織像、肝含有TG量測定)およびIRIの評価を行った。 フルクトースに起因する脂肪肝モデルとして、まず高脂肪食モデルと同じく食事飲料投与期間を9週間に設定し、「高フルクトース食+水」「普通食+30%フルクトース飲料」「高脂肪食+30%フルクトース飲料」の3モデルを飼育、脂肪肝の評価を行った。予測に反してこの3モデルのいずれにおいても脂肪肝程度は、Microvesicular steatosisであり高脂肪食モデル(Macrovesicular steatosis)のそれに比べ有意に軽度であった。成因の異なる同程度の脂肪肝間でのIRI程度の比較を目指した本研究には不適切なモデルとなったが、IRI程度の評価を行った。フルクトース起因脂肪肝モデルではトランスアミナーゼ、肝組織MPO等の代表的なIRI指標において、脂肪肝程度の割に障害の強さが示され、組織像では壊死領域が広く認められ、フルクトース起因脂肪肝のIRIに対する脆弱が示唆された。 高脂肪食モデルに関しては、十分な脂肪肝モデルとしてIRIに対する薬物治療効果を評価する実験を先行することとした。これまで通常肝IRIに対してその効果が示唆されている遺伝子組換えヒトトロンボモジュリン(rTM)を治療薬物として投与し、IRIの軽減効果を評価した。結果はトランスアミナーゼ、肝組織MPOにおいて有意に改善がみられ、その効果が示された。また同薬の作用機序に関して、我々はrTMの抗炎症効果に重点を置き検討を行った。結果、HMGB1の血清値、炎症性細胞浸潤障害に関するマーカーであるICAM-1、iNOSなどの肝組織における遺伝子およびタンパクの発現と組織像での壊死領域の評価において、同薬の有意な治療効果を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主目的は、食事性成因別脂肪肝間において、虚血再灌流障害の程度の違いを評価することにあるが、そのためには、各モデル間において同程度の脂肪肝レベルが求められる。その飼育期間は最長では2ヶ月を超える期間を要する。食事の種類により脂肪肝の発育に違いが出てくることは、既存の報告より予想されていたが、フルクトース投与モデルに関しては過剰、過少の両方向に予測が大幅にずれ、その予測が大変困難であった。またフルクトース食はアメリカより輸入しており、ハリケーン被害を受けた製作会社より供給を得られなかった期間があり、4ヶ月ほどの同モデルを使った実験が中断された。フルクトース起因性脂肪肝に関してはそのモデルを未だ完成できていない状況である。 以上の理由により、初年度に計画した実験目標においては順調な進行具合ではなかった。しかしながら、すでに確立している高脂肪食モデルと正常肝モデルにおいて、次年度に予定していた薬物投与実験を先行させる実験プランの変更を行い、成果を得ることができた。総合的に評価し、上記区分と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
既に高脂肪食とフルクトース食に起因する同程度脂肪肝モデル作成を継続すべく、フルクトース起因性脂肪肝モデル作成プランを変更し、新たに「高フルクトース食+30%フルクトース飲料」9週投与モデルを加え、脂肪肝の評価を行っている。結果、予測を超えた非常に重度の脂肪肝(Macrovesicular steatosis)が認められ、脂肪食モデルの脂肪肝程度を凌駕するものであった。過剰な脂肪肝作成となった、高フルクトース食+30%フルクトース飲料9週間モデルの反省により、食事飲料投与期間を6週間に短縮することにより、高脂肪食9週間投与モデルと同程度の脂肪肝作成を目指す。このモデルの脂肪肝レベルの評価を行い、目指した脂肪肝レベルが確認できれば、当初の実験計画を遂行する。つまり、脂肪由来とフルクトース由来の同程度の脂肪肝において、同条件下(虚血時間、再灌流時間)にてIRIモデルを作成する。既に高脂肪食モデルにて結果のでている、炎症機序、特に好中球の肝への遊走、浸潤に関わる機序を中心に分析していく。具体的には肝障害度の指標として、これまでと同様にトランスアミナーゼ、MPO、肝組織像、好中球に関するものとして、ICAM-1などの接着分子、iNOSなどの障害物質の他、最近他の病態にて注目を集めているマトリックスメタロプラテイナーゼなどを加え、フルクトース由来脂肪肝にて多く発現していると予想されるタンパクの発現を解析する。これらはこれまでの結果より、再還流後6時間後モデルがその解析に適切なモデルと考えている。またフルクトース由来脂肪肝モデルにおいては、ATPの枯渇が再灌流前しいては既に虚血前に他の脂肪肝モデルより高度であるためにIRIが助長されるとの仮説を確認するため、非虚血肝、虚血非再灌流肝モデルをさらに作成し、検証を行いたいと考えている。
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