2013 Fiscal Year Research-status Report
静脈投与したリドカインの脊髄における鎮痛機序の解明
Project/Area Number |
25861365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
倉部 美起 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (30635579)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リドカイン / in vivo パッチクランプ法 |
Research Abstract |
1.研究結果 (1) 脊髄後角ニューロンにおけるリドカインの自発性興奮性シナプス後電流(excitatory postsynaptic currents:EPSC)への作用:成熟ラットより脊髄in vivo標本を作成し、脊髄後角ニューロンよりホールセル・パッチクランプ記録を行った。リドカインを尾静脈より投与したところ、自発性EPSCの頻度は用量依存性に減少した。振幅に有意差は認めなかった。リドカインによる抑制作用は可逆的であった。つまり、静脈投与したリドカインは用量依存性に自発性EPSCの頻度のみを減少させることを明らかにした。(2) リドカインの誘発性EPSCへの作用:右下肢受容野に有鉤鑷子で5秒間のpinch刺激を与えることにより、誘発性EPSCが記録できる。リドカイン投与により、誘発性EPSCは投与前に対して有意に減少した。(3) 脊髄表面に灌流投与したリドカインの自発性EPSCへの作用:静脈投与したリドカインが血中から脳脊髄液中へ移行した結果、Na+チャネルに作用した可能性を考慮し、リドカイン100 μMを脊髄表面に2分間灌流投与したが、自発性EPSCの頻度、振幅いずれも変化はなかった。 2. 研究結果の意義 これまで、静脈投与したリドカインが神経障害性疼痛および炎症性疼痛に対して鎮痛作用を発揮することが報告されているが、その作用機序についての詳細は不明である。リドカインがNa+チャネル遮断作用を持つことは知られているが、静脈投与した際のリドカイン血中濃度はNa+チャネルを遮断するには著しく低い。また、直接脊髄表面にリドカインを灌流投与しても自発性EPSCに変化を認めなかったことから、今回観察された興奮性シナプス伝達の抑制には、Na+チャネル阻害作用というよりも他の受容体や下行性抑制系などが関与している可能性がある。現在これらの系の関与について更なる研究を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、主に正常ラットにおいてin vivoパッチクランプ法を用いて静脈投与したリドカインの作用を解析した。これまでの研究より、リドカインは、脊髄後角ニューロンにおいてシナプス前終末からのグルタミン酸の放出を抑制し、その結果として脳への痛覚伝達が抑制され、鎮痛作用を発揮している可能性が示唆された。当初の研究計画では、臨床的にリドカインの静脈投与は神経障害性疼痛患者に対して使用されているため、すぐに神経障害性疼痛モデルラットでの解析を行う予定であった。しかし、本研究から正常ラットにおいてもリドカインが興奮性シナプス伝達を抑制することが明らかとなったため、その詳細な機序について検討しているところである。 また、平行して神経障害性疼痛モデル(坐骨神経絞扼モデル)ラットを作成し,静脈投与したリドカインの作用の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、正常ラットにおいて静脈投与したリドカインの作用を解析した。リドカインが興奮性シナプス伝達を修飾することは明らかになったが、過去の報告からリドカインの鎮痛機序に、下行性抑制系やグリシントランスポーターなどが関与することが示唆されている。このため、平成26年度は、引き続き正常ラットにおいて抑制性シナプス後電流へのリドカインの作用を解析する。また、脊髄半切ラットを作成し下行性抑制系の関与を絶った上で、興奮性シナプス伝達および抑制性シナプス伝達に対するリドカインの作用を解析する予定である。同時に、神経障害性疼痛モデルラットにおけるリドカインの作用についてもデータ数を増やす予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたよりもin vivoパッチクランプ法での記録がスムーズに行えたため、当初購入予定であったラットやその他の消耗品代が低く抑えられたため。 平成26年度には、リドカインのより詳細な作用機序を解明するために、脊髄半切ラットや、神経障害性疼痛モデルラットを作成し、実験を進める予定である。そのため、平成25年度よりは実験手技がより困難になることが予想され、消耗品により予算が必要となると考えられる。
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Research Products
(3 results)