2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト鼻粘膜上皮を用いた呼吸器ウイルス感染に対する新規治療戦略の検討
Project/Area Number |
25861573
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
大國 毅 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40464490)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | RSウイルス / 上皮バリア機能 / 抗NF-kB作用 / elF2α |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器ウイルスであるRS(Respiratory syncytial)ウイルスは、小児科領域において重症細気管支炎の原因として、また気管支喘息重篤化因子として重要な病原体であると知られる。しかし有効な治療薬はなく、RSウイルスに対するモノクローナル抗体での予防は高リスク患者にのみ使用が制限され、新規治療法開発は急務である。 RSウイルス感染初期は、ヒト鼻粘膜上皮がターゲットであるとされる。過去のわれわれの研究で確立した、正常ヒト鼻粘膜上皮細胞へのRSウイルス感染モデルを評価系として用いることで、生体におけるウイルス性上気道炎の生理的変化と類似した現象を観察することができる。RSウイルスに対する治療に結び付く知見を得るべく、抗ウイルス作用・抗炎症作用等を有し、既に複数の機能性食品に応用され安全性が担保されるcurcuminに着目し検討した。 RSウイルス感染ヒト鼻粘膜上皮細胞では、継時的にRSウイルスG蛋白の発現亢進、およびウイルスフィラメント増加が確認されるが、curcumin前処置によりこれらは有意に抑制された。curcuminは、それ自体がもつNF-kB阻害作用だけでなく、炎症性物質であるTNFαやCOXの産生を抑制し、細胞間接着装置であるタイ結合分子を誘導、上皮バリア機能亢進に寄与した。またウイルス感染により活性化されるキナーゼ‐PKRを活性化し、翻訳調節因子elF2αの脱リン酸化を抑制することで、小胞体での蛋白合成を停止、ウイルス複製を阻害する可能性が示唆された。RSウイルス受容体の一つであるnuclelionには影響を与えなかった。 以上の実験結果からRSウイルス感染の予防法、または感染初期の治療法として、鼻粘膜へのcurcumin局所点鼻投与が新規治療法候補として挙げられた。他の呼吸器ウイルスに関するcurcuminの治療効果に関しさらなる検討を進めていく。
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[Presentation] Tricellular junctions in human nasal mucosa2014
Author(s)
Okuni T, Nomura K, Miyata R, Kakuki T, Ogasawara N, Kondo A, Kurose M, Ninomiya T, Takano K, Kojima T, Himi T.
Organizer
ISIAN(International Society of Infection and Allergy of the Nose)
Place of Presentation
オランダ
Year and Date
2014-06-20 – 2014-06-22