2013 Fiscal Year Research-status Report
β溶血性口腔連鎖球菌が産生するストレプトリジンSホモログの病原因子としての真価
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25861746
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田端 厚之 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10432767)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ストレプトリジンS / 口腔連鎖球菌 / アンギノーサス群連鎖球菌 / β溶血 / 病原因子 / Streptococcus |
Research Abstract |
我々はこれまでに、ヒト口腔内常在細菌叢を構成するアンギノーサス群連鎖球菌であるStreptococcus anginosus subsp. anginosusのβ溶血性を示すサブグループ(β-SAA)の溶血因子がペプチド性溶血因子であるストレプトリジンS(SLS)のホモログであることを明らかにしており、平成25年度はβ-SAAの感染に対するSLSホモログに依存的な応答反応を細胞レベルで検討することを目的に研究を行った。本年度の検討結果より、まずβ-SAAが産生するSLSホモログの細胞障害性についてヒト由来培養細胞を対象として検討した結果、赤血球と比較して培養細胞に対する障害性は著しく弱いことが明らかとなった。そこで、次にβ-SAAとの共培養による細胞障害性について検討した結果、SLSホモログの産生状況に依存した細胞障害性を示す傾向が確認された。これは、一般的には非(弱)病原性菌と認識されているアンギノーサス群連鎖球菌の中には、赤血球のみならず細胞に対しても障害性を示すサブグループが存在するということを示唆し、アンギノーサス群連鎖球菌の病原性を再認識する上で意義のある結果であり、かつ重要性が高い知見であると思われる。なお、SLSホモログ依存的な細胞応答反応についてさらに詳細な解析を行うために、実験条件の追加検討や最適化を含めたさらなる検討が効果的であると考えられ、現在進行中である。 また、本年度の研究を進めて行く過程において、β-SAA以外のβ溶血性を示すアンギノーサス群連鎖球菌(S. anginosus subsp. whileyiおよびS. constellatus)のβ溶血因子もSLSホモログであることを明らかにし、この成果については雑誌論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、β-SAA感染に対するSLSホモログ依存的な応答反応を細胞レベル(in vitro)で明らかにすることを目的とし、具体的には、SLSホモログに依存したβ-SAA感染に対する炎症性サイトカインの産生変動やその遺伝子発現の調節、さらに関連するシグナル伝達因子の動態に注目した研究を計画した。本年度の研究により、β-SAAとの共培養条件において、SLSホモログ依存的な細胞障害性を確認することができた。この際、実験条件の検討や設定に予想以上の時間と労力を要し、結果として本年度内にSLSホモログ依存的な細胞応答反応に関わる具体的な因子(サイトカインやシグナル伝達因子)を特定するまでは至らなかった。しかしながら、基盤的な実験条件は確立できたということで、以後の実験については当初計画まで進め、さらに展開できると考えている。 なお、本年度の研究を進めていく過程で、コレステロール依存性細胞溶解毒素を産生するS. intermesiusおよびβ-SAA以外のβ溶血性を示すAGSのβ溶血因子がSLSホモログであることを明らかにすることができ、β溶血性口腔連鎖球菌が産生するSLSホモログの病原因子としての真価を検討する上で大きな進展があった。その成果は雑誌論文として発表できたことなど、本研究の成果は着実に得られている。 以上を踏まえた上で、総合的な達成度として「(2)おおむね順調に進展している。」と自己点検により評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、まず平成25年度の検討で確立した実験条件において、in vitroにおけるSLSホモログ依存的な細胞応答反応に関わる具体的な因子(サイトカインやシグナル伝達因子)の特定を目指し、可及的速やかに検討を進める。これまでの検討によって基盤的な実験条件はほぼ確立できている状況にあるが、より明確な結果を得るためにはさらなる実験条件の検討など(具体的には検討対象細胞の選定や被検菌と検討対象細胞との共培養に関する詳細な条件の設定など)が必要であることも考えられ、これも含めてin vitroでの検討を急ぎ完了させる。 in vitroにおける検討結果が得られた上で、その検討結果に基づき、平成26年度の研究実施計画として計画しているSLSホモログに依存したβ-SAA感染に関する(可能であれば、SLSホモログを産生する他のβ溶血性AGSの感染についても)動物個体レベル(in vivo)での検討を行う。この実験の流れは、動物実験を適切に行うためにも必要不可欠であり、本研究の当初計画を達成するためにさらに研究に邁進する所存である。 なお、SLSホモログに依存したβ-SAA感染を検討・評価するためにはin vivoでの実験は必須であると考えているが、in vitroでの検討結果によってはin vivo実験の必要性を検討する状況に直面する可能性も考えられる。その場合は、適切な動物実験の遂行の観点より、その状況に応じて適宜判断して対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月末に開催された学会出張費などの支払いが現時点で完了していないため。 4月に支払いが完了する予定である。
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Research Products
(2 results)