2017 Fiscal Year Research-status Report
医療型障害児入所施設における被虐待児の地域移行・自立支援に関する研究
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25862183
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大橋 麗子 岐阜大学, 医学部, 助教 (90612614)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | こども虐待 / 障害児入所施設 / 地域移行 / 自立支援 / 障害児 / 社会的養護 / アフターケア / リービングケア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度及び平成29年度は産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い補助事業を中断していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子どもの地域移行・自立支援の基礎となるリービングケアの課題を明らかにするために,障害児入所施設で日常生活支援を行う職員を対象とした,虐待を受けた子どもの行動特徴とその支援に関する研修と調査を行った。研修前後に行った質問紙調査からは,職員は虐待を受けた子どもの特異的な行動特徴に対応することに困難を経験しており,勤務年数5年未満の職員は5年以上の職員と比べ,子どもに対して「ネガティヴな感情的対応」や「距離をおく対応」を多くしていること,研修後には研修前よりも「子どもの気持ちを理解することは難しくない」と「子どもの対応について他の職員に応援を頼みやすい」の得点が高くなっていることが示された。これらの研修前後の変化は,バーンアウトに間接的効果があることも示されており,職員に対する虐待を受けた子どもを理解するための支援は,子どもへの支援や職員の精神的健康に効果があることが示唆されたといえる。 虐待を受けた子どもの支援が機能する状況の全体構造を把握する目的で行った調査では,子どもに対して多職種による専門的支援や治療・リハビリテーションに加え,虐待を受けたことに配慮した個別担当制による個別的なかかわりや子どものペースに合わせたかかわりといった治療的養育が行われており,これらが虐待による心理的影響の変化に至っていることが示されていた。また肯定的変化をもたらす支援は,施設内や外部機関と柔軟に役割分担をする連携・恊働体制によって行われていた。一方で,肯定的変化として子どもや養育者,子どもと養育者の関係への変化,家庭への退所が示されたものの,子ども自身の自立や地域移行そのものについての事項は示されなかった。自立支援や地域移行についての取組みやアフターケアの実際,それに伴う困難さ等について焦点をあてて今後は調査していく必要性があるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかとなった施設におけるリービングケアの全体像をもとに,今後は,自立・地域移行が行われる時期,施設を退所する前後に焦点をあてて調査をおこなっていく予定である。施設を退所する前後に行われる本人及び養育者への支援の具体的内容と,それに伴う困難な状況や支援を促進する要因は何であるのかを明らかにすることを目的としたい。研究の方法としては,施設を退所する前後に支援を行った経験のある施設職員を対象とし,職員が経験してきた複数事例について,具体的な支援内容とその状況をインタビュー調査することを計画している。まずは,支援する側が経験してきた自立・地域移行に伴う支援の実際を把握し,それに伴う困難や良い結果をもたらした事例を知ることにより,虐待を受けて施設に入所する子どもが施設を退所する前後と退所後のアフターケアに存在する課題について検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度及び平成29年度については,産前産後の休暇及び育児休業に伴い当該研究を中断していたため支出は発生しなかった。 平成30年度では,地域移行・自立支援を行う施設職員を対象にインタビュー調査を行う予定である。そのため,調査準備及びリクルートにかかる物品費及び他経費,インタビューを行うための交通費,研究参加者に対する謝礼等に使用する予定である。また研究結果について,学会及び研究会での情報収集や相談,成果の発表のために旅費としての使用を予定している。
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