2014 Fiscal Year Research-status Report
原子間力顕微鏡による氷表面での2種類の擬似液体層の形状・厚み測定
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25870009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長嶋 剣 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60436079)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 氷 / 擬似液体層 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では原子間力顕微鏡用の氷表面観察セルの作成と氷表面の観察を行った。 観察氷を作るためには観察部を過飽和にする必要があるが、観察部以外の場所は未飽和になるように水蒸気量を調整しないと、結露等で装置の故障につながってしまう。そこで、前年度に環境構築したインキュベータで環境温度を+5℃に保ち、そのインキュベータ内で観察部を-10℃まで冷やせるセルを作成した。冷却はペルチェ素子と水冷機構により実現した。また、水蒸気量は空気と乾燥窒素ガスとの混合によってコントロールした。その結果、観察部を過飽和条件にして単結晶氷を作成することに成功した。氷の自形である六角板状の結晶が確認できたため、氷ベーサル面を観察できていることもわかった。 氷表面のナノ計測の際に氷結晶の成長、蒸発、融解などは避けられないが、これらを極限まで抑制しないと氷結晶表面の上下動により原子間力顕微鏡測定は阻害されてしまう。現状では成長・蒸発速度が精密にコントロールできていないため、安定した3次元トポグラフ計測は難しいためXY方向にスキャンせずZ方向のみを動かすフォースカーブ測定を中心に行っている。今後に向けては、より安定した温度場・濃度場を作り出せるようセルの改良を行っている。 また、氷表面で擬似液体層の生成する温度・過飽和条件をおおまかに見積もるために、レーザー共焦点微分干渉顕微鏡で氷の表面を観察した。それで得られた環境条件を元に原子間力顕微鏡用のセルでも同条件を作り出せるよう調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観察セルの作成により単結晶氷を観察できるようになったのは大きな進展である。結晶面によって形成条件が異なる擬似液体層の観察においては面方位のわかった氷を観察することは重要である。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。ただし、氷表面の綺麗な3次元トポグラフを得るに至って氷結晶の成長・蒸発速度が早過ぎるという問題があるため、観察セルの改良等で早期解決を目指す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請した当初と大きな変更はなく、このまま進めていく予定である。 一方、レーザー共焦点微分干渉顕微鏡観察により、塩化水素ガス存在下では氷表面での液体層の形成が促進されることを発見した。これは2つの意味を持つ。1つは氷表面での液体層をより幅広い条件で容易に観察できるであろうこと、もう1つはオゾンホール生成など環境科学への応用が考えられる事である。よって、当初は窒素ガス雰囲気での実験のみ考えていたが、適時塩化水素ガスの効果も調べていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
物品費が発生しなかった理由としては、計上していた観察用セル作製一式を自作したからである。一式装置としての作製が難しかったため、既に所持していたセルを分解して得た部品を用いて自作した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
氷結晶の蒸発・凝縮を抑制するためには、水蒸気量をより一層精密にコントロールする必要があることがわかったため、窒素ガスと水蒸気ガスを混合して導入する装置を作製する。
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