2015 Fiscal Year Annual Research Report
クラカウアーとアドルノの映像メディア論におけるオルタナティヴ・メディアへの志向
Project/Area Number |
25870152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹峰 義和 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20551609)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フランクフルト学派 / 批判理論 / 表象文化論 / モンタージュ / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、1)『啓蒙の弁証法』の文化産業論を修辞学的視点から読解するなかで、言説上でパフォーマティヴに遂行される挑発としてアドルノのテクストの特徴を検証する作業 2)アレクサンダー・クルーゲの『歴史と我意』や映像作品で実践されているモンタージュの理論的内実を、クルーゲの初期テクストを手掛かりとして究明するとともに、ベンヤミン、クラカウアー、アドルノのモンタージュ観との接点および差異を検証する作業 3)クラカウアーの映像論を、フランクフルト学派の映像メディア論の系譜のなかで位置づけるなかで、その時代性と独自性を考察する作業 の3つの作業を軸に研究活動をおこなった。 その結果として、1)アドルノの文化産業論が、批判的考察の対象である産業資本主義的=ファシズム的な修辞法(誇張、単純化、二分法)を意図的に擬態することによって、そのメカニズムを、読者に反感のような情動とともに体感させるという言説戦略をとっていること 2)ベンヤミン、クラカウアー、アドルノ、クルーゲへといたるフランクフルト学派の思想家におけるモンタージュという技法とモティーフのうちに、挫折と破綻に終わった過去の希望の残骸を組み合わせることで、来るべき社会に向けられたユートピア的可能性を追想させる回路を開くという志向が一貫して存在していること 3)クラカウアーの映像論の鍵概念をなす「リアリズム」のうちに、事物世界を忠実に再現するといった狭義のものではなく、挫折したユートピア的可能性を追想させる〈メーディウム〉へと映像メディアを転化するという企図が込められていることを明らかにした。 以上の最終的な成果は、2016年7月に東京大学出版会から刊行予定の『〈救済〉のメーディウム――ベンヤミン、アドルノ、クルーゲ』として発表されることが決定している。
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Research Products
(1 results)