2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870190
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木立 尚孝 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80415778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RNA二次構造 / バイオインフォマティクス / 進化 |
Research Abstract |
本年度は以下の様な研究を行った。 1.RNA配列が与えられたとき、配列が任意の塩基置換、挿入、欠失を起こした場合の塩基対確率、アクセシビリティ、ステム確率の変化を網羅的に計算するプログラムRadiamを実装した。このプログラムを用いてRNAの変異を調べることにより、RNAの二次構造に働く、進化的な選択圧を精密に検出することが可能になった。 2.Radiamを用いて、Rfamデータベースに登録されているtRNA配列およびrRNA配列の変異解析を行い、実際に起こっている変異による二次構造の変化をバックグラウンドの変化と比較することにより、非コードRNAの二次構造に働く進化的な選択圧を検出することができた。 3.2.の手法をヒトゲノム上のmRNA配列に対して適用し、配列の各領域に働く、構造的な選択圧の検出を試みた。その結果によるとUTR領域においては、構造を保とうとする選択圧が強く働いていることが示された。またアミノ酸コード領域においては、コードするアミノ酸を変化させない同義置換では、進化的な選択圧が検出されたが、アミノ酸を変化させる非同義置換においては選択圧が検出されなかった。 4.ゲノムスケールの配列に対して、二次構造的な特徴量を網羅的に計算することができるプログラムParasorを開発した。このプログラムにより、ヒトゲノムのあらゆる領域の二次構造的な性質を調べることができるようになった。特にヒトゲノムに存在する長大なイントロン領域に働く二次構造的な選択圧を精密に検出することができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RNAの二次構造を並列計算するアルゴリズムは、当初の計画になかった大きな発見であった。このアルゴリズムにより、クラスターマシンをフルに活用して、現実的な時間内で、ゲノム全体の二次構造的特徴を計算することができるようになった。この手法は、今後のRNAの二次構造研究に大きなインパクトを与えることが期待される。 また、当初の目的であった、RNA配列の変異の元での二次構造変化を調べる研究も順調に進んでいる。このため、全体としては、当初の計画以上の進展が見られているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAの変異の元での二次構造の変化を検出するプログラムは現在の所並列計算には適応しておらず、本来の目的である、長大なイントロン領域に働く二次構造的な進化選択圧の検出に使うことに大きな困難がある。このため、すでに開発した、並列計算アルゴリズムへの移植を行う必要がある。この作業の後に、ヒトゲノム上のあらゆるpre-mRNAに対して、網羅的な二次構造解析を行い、配列の各領域の二次構造的な選択圧を検出する。 前年度に開発した、RNA二次構造のゲノムワイドの並列計算アルゴリズムにより、転写領域と非転写領域の二次構造的な性質の違いや、選択的スプライシング領域の二次構造的特性などを網羅的に調べられる様になった。これまで難しかった研究が色々可能になり、多くの価値ある研究テーマが生まれたが、それを整理して、価値の高いものから順に実行していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RNA二次構造解析ツールの実装に予定より多くの時間を費やし、予定していた国際学会発表を行わなかったため、次年度以降に学会発表費用を繰り越すことにした。また、論文発表も今年度は予定より少なかったため、そのための費用も次年度以降に繰り越した。 研究は当初の予定以上に進展しているため、論文発表や研究発表の機会を多く設けて、研究成果を発信していきたい。このために今年度繰り越した予算を使う。翌年度分として請求した助成金は、予定通り計算機使用料や、研究データ保存用のディスクサーバを購入するために使う。
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Research Products
(9 results)